【実施報告】みんなの経験共有会vol.24 「未来につなぐ感動の演劇~NPO法人町田演劇鑑賞会のあゆみ~」を開催しました
みんなの経験や挑戦を市民の知にしていく場「みんなの経験共有会」。2025年度も引き続き<温故知新シリーズ>としてこの先も町田で語り継いでいきたい活動をしている地域活動の先輩をゲストにお招きし、じっくりとお話を伺っていきます。
7月22日にみんなの経験共有会vol.24 「未来につなぐ感動の演劇~NPO法人町田演劇鑑賞会のあゆみ~」を開催しました。オンライン配信、アーカイブ視聴を含め11名の方にご参加いただきました。
| ゲスト NPO法人町田演劇鑑賞会の皆さん
地元町田で良質の演劇を身近で観続けるための会員制・サークル制の文化団体です。1985年に発足して以来、40年の歴史があります。現在会員は800名程、これまでに演劇公演は219回(2025年7月時点)行ってきました。2010年には、町田市文化功労団体賞を受賞。2016年には都内の演劇鑑賞団体で初となるNPO法人格を取得しました。時代の変遷により演劇や文化に対する価値観も多様化する中、話し合いを重ね、ここまで活動を続けてこられたあゆみをお聞きします。 |

当日お話いただいたのは、写真右から大谷光雄さん(会長)、山上輝雄さん(理事)、紫桃弘美さん(事務局長)です。進行はサポートオフィスの杉山久美子が担当しました。以下、お話の内容をレポートします。
―町田演劇鑑賞会とは(紫桃弘美氏)
町田演劇鑑賞会は、良質な演劇を継続して楽しめる、会員制・サークル制の文化団体です。今年で設立40周年を迎え、これまでに219回の公演(例会)を行ってきました。現在の会員数は約800名、95のサークルが活動しています。演劇鑑賞会は全国に108団体あり、町田はその中で関東エリアを中心とした「首都圏ブロック」に所属しています。
町田では年6回、町田市民ホールで昼・夜2部制の公演を実施。すべての会員が全演目を鑑賞でき、座席は毎回ローテーションで調整、公平性にも配慮しています。見えにくい・聞こえにくい方に向けて柔軟な対応も行っています。
公演日程が合わない場合は、他地域の鑑賞会で同じ演目を観ることも可能です。活動は3名以上の「サークル」単位で行い、仲間と感想を語り合いながら会の運営にも関わります。年1回は担当例会として受付や販売などを担い、終演後には出演者にワインを手渡す「カーテンコール」も行われるなど、観客と演者がつながれる場となっています。
―演劇鑑賞会のあゆみ(大谷光雄氏)
演劇鑑賞会の始まりは戦後、昭和27~28年頃です。お芝居を観ることを目的とした専門の団体が各地に生まれ、演劇団体とともに成長してきました。大阪、東京、仙台など大都市を中心に広がり、鑑賞会は劇団が演劇をし続ける環境を支えてきたと言えます。
私が町田で活動するきっかけとなったは、山田洋次監督の映画『同胞(はらから)』の上映で実行委員を頼まれたことです。その後、横浜の仲間から「演劇鑑賞会があるよ」と教えてもらい、説明会のつもりで行ったらすでに18人が集まり、準備会がスタートすることになりました。町田演劇鑑賞会の立ち上げ準備が始まったのは1984年のことです。
それから40年、困難もありましたが、「町田には芝居を観たい人が確かにいる」と感じています。そうした人たちがつながり、周囲に広がっていったことは、この会の大きな成果です。
2016年には、次世代に活動を引き継ぐためにNPO法人化しました。当初は「会員制がNPO法にそぐわない」と都庁から指摘されましたが、「誰でもいつでも入会できる」という仕組みを説明して理解を得ました。現在は情報公開も進め、毎月の役員会で運営状況を確認しており、信頼されるNPOとして活動をしています。
■トークセッション
Q1.事務局長と理事の役割分担について教えてください。
紫桃さん: 事務局長は専任で務めており、組織の中では非常に重要な役割を担っています。自分で言うのもなんですが(笑)、事務局長は“要”だと思います。ただし、理事会では全員が対等で平等。事務局長として提案はしますが、最終的にはみんなで話し合って決める、とても民主的な団体です。
大谷さん: 会長・副会長・事務局長の3人で構成される「三役会」もあります。ここで事前に考え方のすり合わせを行います。理事会は毎月1回行っており、その1週間ほど前に三役会を開いて理事会の準備をしています。
紫桃さん: この三役会は、話し合いが成立する最少人数とも言えます。ここで話し合った内容を理事会に提案しますが、理事会でその案が覆ることもあります。
山上さん: 理事の中から「それはちょっと違うんじゃないか」という意見が出るのも日常的です。でも、それは単なる反対ではなく、全員で納得できる合意点を見つけていくために必要なこと。理事会では多数決はほとんど取りません。目指す方向はみんな同じなので、真っ向から意見が対立するということはあまりありません。やはり、お互いに信頼関係があることが前提ですね。こうした話し合いの場として、事務所のような拠点があるのも大切だと思います。
大谷さん: 拠点があるというのは本当に大事なことですね。必ずしも家賃を払って借りる必要はなく、公共施設やメンバーの自宅でもいい。顔を合わせて集まれる場があることが、活動を支える大きな力になると思います。
紫桃さん: 理事会での議論だけでなく、懇親会を開催することもあります。理事の皆さんでカラオケに行くこともあって、和やかな雰囲気なんですよ。
Q2.新規会員を増やしていくコツや事例を教えてください。
紫桃さん: まずは、鑑賞会に入っていること自体が楽しいという気持ちを、素直に伝えることが大切だと思います。声かけが苦手でも、楽しさを伝えることが最初の一歩です。
大谷さん: 日常的に舞台を観るのはなかなか難しいですよね。演劇鑑賞会は「その地域に住む人が近くのホールで気軽に観る」という形で続いてきた歴史があります。その存在を守り続けることが何より大切です。これまでいろんな反応に遭ってきたので心臓が強くなったのかもしれませんが、相手の気分や状況もあるので、気にしすぎず「楽しいことを広げる」ことだけでいいんじゃないかと思います。
山上さん: 自分が観て楽しかったことを素直に話す。それを相手が好きかどうかは相手が判断することなので、話す側があれこれ考えすぎる必要はないと思います。入会するかどうかの判断は相手に任せる、これがモットーです。それくらいの気持ちでないと、なかなか広がっていきません。
紫桃さん: 私は事務局長として事務所にいるので、サークル代表の方とは毎月の会費納入で顔を合わせています。その顔はもちろん、その後ろにいる会員の皆さんの顔も覚えています。会費納入はお金を払いにくるだけでなく、世間話ができる機会にもなっています。先輩からは生き方を教わり、若い方からはパワーをもらう、そうした交流の中で得るものはたくさんあります。年齢に関係なく人と人とのつながりを大事にしています。みんなが関わり、みんなが主催者として運営を支えているので、一人ひとりを大切にすることを心がけています。
Q3.さまざまな立場の方々の意見を取りまとめていくコツや工夫はありますか?
紫桃さん: 山上さんは長く働いていらっしゃったので、社会経験に基づく的確な意見を要所ごとに伝えてくださいます。
大谷さん: 理事の選出は、活動の様子や会全体を考える姿勢、人と話す様子などを見て、「この人がいいかな」と自然に候補が浮かびます。
山上さん: 新しい理事は、現在の理事の推薦が多いです。本人の了承を得て理事に迎えます。本来は立候補が望ましいのですが、手が挙がらないため、こちらから声をかけることが多いです。
Q4.運営資金は会費が多いのでしょうか?
紫桃さん: 基本的には会費で運営しています。寄付などの雑収入があることもあります。
大谷さん: 助成金はあまり多くはありません。会員やサークルとしっかり向き合いながら会員を増やしていく方が確実だと考えています。
山上さん: コロナ禍では助成金を利用しました。前年より減った収入分を補填する助成金もあり、NPO法人であったことが申請の助けになりました。情報も大々的に出ていたので申請に向けてスムーズに動くことができました。
Q5.市民ホール改修工事の際は、活動に影響はありましたか?
紫桃さん: コロナと改修工事で会場が使えず、町田演劇鑑賞会には大きな打撃でした。川崎や大和のホールを借りて公演を続け、「流浪の民」状態に。副会長の熊坂さんが、他会場でも楽しもうと遠足気分を盛り上げるため、しおりに詳しい地図やコメントを書いてくれました。何より会員の皆さんが遠くの会場まで来てくださったことが支えでした。サークルごとに集まり食事や送り迎えをし合うなど、サークル制の力を実感しました。演劇鑑賞会は集いの場としての社会的役割も担っていると思います。
山上さん: 人のつながりがあるからこそ、災害時には助け合えます。能登のサークルでは演劇鑑賞会の会員同士で安否確認も行われたそうで、NPO法人としての役割も果たしていると思います。
Q6.演劇鑑賞会を取り巻く社会情勢が変わってきていると思いますが、これからの若い世代へのアプローチ方法について何か考えていることがあれば教えてください。
紫桃さん: 町田市内の専門学校や高校、大学生を無料招待する取り組みをしています。すぐに会員になってもらうのが目的ではなく、生のお芝居を観る経験を提供したいと思っています。何かの時に演劇鑑賞会を思い出してもらえればと。首都圏の演劇鑑賞会の中でも若い世代へのアプローチを模索していて、船橋や城北のやり方を参考にしています。
山上さん: 私は専門学校に各公演のポスターを貼ってもらう活動を3年続けています。12~13校に掲示してもらっていますが、まだ効果はあまり出ていません。先生方は好意的です。身近なところでは孫に声をかけている方も多いです。
大谷さん: 最近の若い方の演劇体験はけっこう少ないと思っています。私たちの高校時代は能楽堂へ行くこともありましたが、今は学校の予算も減っているようです。高校生が入会すると会費は毎月1000円ですが、それでも大きな出費だと言われます。高齢化が進み、鑑賞会の存続が危ぶまれる中で、若い世代に演劇体験を積んでもらうことを大切にしています。入会を急がず、舞台経験が将来につながればと考えています。今行っている取り組みで、反応があれば嬉しいです。
参加者からの質疑応答
Q.広報について。過去の情報を整理する方法について教えてください。
紫桃さん: 演劇に関する資料は紙でファイリングし、40年分の記録を保管しています。40周年記念冊子作成時に役立ちました。40周年記念冊子は分厚い冊子ではなく、未来の会員に関心を持ってもらえるよう小さなサイズのリーフレットにしました。昔のポスターや機関誌は理事が管理し、スキャンしてデータ保存もしています。会員情報は個人情報なのでExcelで管理し、クラウドにも保存して紛失防止に努めています。
Q.団体の認知について
紫桃さん: 鑑賞会をもっと知ってもらうため、町田市市民協働フェスティバルまちカフェ!に参加して接点を作りました。そこで会員になってくださった方もいらっしゃいました。私は苗字も特徴的なので、「パープル(紫)ピーチ(桃)」と自己紹介し、覚えてもらえるようにしています。いろいろなイベントに積極的に参加して楽しみながら活動しています。
山上さん: 町田市生涯学習センターまつりなど様々な行事にブースを出して知名度を上げています。毎回1~2人は入会につながっています。クイズ形式の出展など、パンフレット配布だけにならないような工夫もしています。
大谷さん: 5~10年活動していると、無理だと思う相手もいますが、一歩踏み込んで声をかけてみると、相手が意外と関心を持ってくれることもあります。自分が壁を作っていたことに気づきました。もっと早く声をかければよかったと思う反面、ここまで続けてきたからこそそういったこともできるようになった面もあります。
Q.運営サークルと個人会員の違いはなんですか?
紫桃さん: 会員は全体で797名おり、95のサークルに分かれています。そのうち、各サークルが1年に1公演、運営に携わる「運営サークル」を担当します。運営サークルは理事会とは別の存在です。
すべての会員はサークルや総会に参加し、その中から数名が理事に選ばれます。理事会が提案を出し、全サークル会議や総会で議論しながら決めていく、非常に民主的な仕組みの会です。
■クロージング
みんなの経験共有会では、最後にゲストの方からメッセージを掲げていただき、クロージングとしています。演劇鑑賞会の皆さんにとって演劇鑑賞会とは?

紫桃さん:なくてはならないもの
私にとっても社会にとってもなくてはならないものです。
山上さん:健康のもと
生のお芝居を観ていろんなことを考えるということは、健康になっています。78歳でーす。
大谷さん:お芝居を通して“いま”を分かち合うとっても大切な場
役者とも私たちとも“いま”を分かち合う、こういう場はありそうで他にはない、とても大切な場です。
当日のアーカイブ動画をご覧になりたい方は、サポートオフィスまでメール(info@machida-support.or.jp)でご連絡ください。
過去の開催記事はこちらからご覧ください。
<2025年度温故知新シリーズ>
▼4月:みんなの経験共有会vol.22「町田から全国へ広がるボランティア ~まちだサポーターズのあゆみ~」
https://machida-support.or.jp/report/report_vo22/
▼6月:みんなの経験共有会vol.23 「町田のたのしいごみ削減啓発活動 ~みんなから大人気!うまちゃん&ゆうちゃんのあゆみ~」
https://machida-support.or.jp/report/_vo23/
●2024年度の過去回再開の実施報告は、下記ページからご覧ください。
*記事の最下部に過去回のリンクを掲載しています*
https://machida-support.or.jp/report/salonvol21-2/
●2023年度の過去回再開の実施報告は、下記ページからご覧ください。
*記事の最下部に過去回のリンクを掲載しています*
https://machida-support.or.jp/report/240321/
●2022年度の過去開催回の実施報告は、下記ページからご覧ください。
*記事の最下部に過去回のリンクを掲載しています*
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon03/
