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実施報告performance

実施報告 2024年12月20日

【実施報告】みんなの経験共有会vol.19~温故知新 「福祉の町田を担った市民たち第2弾 ~町田ハンディキャブ友の会~」

みんなの経験や挑戦を市民の知にしていく場「みんなの経験共有会」。2024年度は新たに<温故知新シリーズ>としてこの先も町田で語り継いでいきたい活動をしている地域活動の先輩をゲストにお招きし、じっくりとお話を伺っています。

11月27日にみんなの経験共有会vol.19~温故知新 「福祉の町田を担った市民たち第2弾 ~町田ハンディキャブ友の会~」を開催し、約40年間の取り組みについて伺いました。当日はオンラインで配信し、アーカイブ視聴を含め17名の方にご参加いただきました。

NPO法人町田ハンディキャブ友の会

町田ハンディキャブ友の会は、1982年に身体に障がいのある方や高齢の方など外出困難な方たちの外出を支援し、自立促進と行動範囲の拡大を目的として設立された会員制のNPOボランティア団体です。通院・リハビリはもとより、お買い物・お食事・娯楽・文化活動等々、多岐にわたり外出を支援しています。2023年には、「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰・内閣府特命担当大臣表彰奨励賞」を受賞されています。

当日お話いただいたのは高橋池鶴子さん(副理事長)、小竹金次さん(理事)、井上廣美さん(理事)のお三方です。以下、当日のお話をレポートします。

今日のお話の概要
1 NPO法人町田ハンディキャブの沿革
2 会を続けてきた組織運営のコツ
3 NPO・民間組織という立場だからこそできること

 


■町田ハンディキャブ友の会の沿革について(報告:井上氏)

―活動のスタート
町田ハンディキャブ友の会は、1983年に活動が始まりました。町田市では「やまゆり号運行サービス」という車椅子の方を送迎するシステムがありましたが、それだけではサービスが行き届かず、その隙間の部分を埋めていきましょうということでスタートしました。当初は法人の車も何もないので、皆さん自家用車を使って送迎サービスを行っていました。今、各地域で自家用車を使った送迎事業が増えていますが、私たちはまさにその先駆けでした。

最初は予算規模も30万円ほどど小さく、そのうちの20万円は誰かからの寄付という運営状況でした。地域に出て活動を知ってもらおうということで、イベントでのたこ焼き販売や老人ホームでのお餅つきなど積極的に参加していた時期もあります。稼ぎにはならないことがほとんどでしたが、会の楽しみになっていました。

―NPO法人化
2001年にNPO法人格を取得しました。その後、2007年に町田市と連携のもと町田市社会福祉協議会からの委託事業として「町田市福祉輸送サービス共同配車センター」を開始しました。これを機に会の知名度が広がったと思います。

―周年事業など
団体の5周年記念で箱根に行くというバスハイクを行いました。10周年、15周年、20周年、25周年と一泊旅行やトークショーなどを行ってきました。バスハイクはコロナを機に行っていませんが、これまで30回以上行いました。当時は普通の観光バスは車いすでの旅行は相手をしてくれず、すべて会のメンバーの人力で実行してきました。危険を顧みない企画でしたが、やってみるとやっぱり楽しかったです。こんな感じで会員の相互交流を盛んに行ってきました。

 

5周年記念で実施されたバスハイクの様子。

 

―バリアフリーマップ
20年前から町田市の方と協議し、町田市バリアフリーマップを立ち上げました。現在850ヵ所くらいがホームページ上に掲載されています。年に1回現況調査を実施しているので、最新情報が掲載されています。

―数々の受賞
2022年12月、福祉のまちづくり功労者に対する都知事感謝状を拝受しました。豪華なメンバーがいらっしゃる中でいただいたことに理事長がとても喜んでいました。滅多にこんなことはないと思っていたらその翌年、バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰という国からの表彰をいただきました。送迎サービスはもちろんですが、バリアフリーマップの作成というのは評価内容の中でかなり大きなウエイトを占めていたと思います。

―歴代の車両たちと運転ボランティアについて
24時間テレビや日本財団その他から色々いただいたり補助を受けたりして車両を確保してきました。現在、所有している車両は8台で、共同配車センターの登録数は500名前後、そのうち年間200名ぐらいの方の送迎を行っています。土曜や日曜の依頼も多いのですが、運転手さんもボランティアですので都合がつかないときもあります。100%の需要には応えられてないのですが、ほぼ皆さんの希望に近い形でやれています。最近の運転手デビューは65歳くらいが多いです。運転手の定年は75歳としています。


■トークセッション

Q1.40年活動を続けてこられたのはなぜでしょうか?

小竹さん:
会ができたのは町田市が「車いすで歩けるまちづくり」から一歩進み、「車いすで生活できるまちづくり」という段階になってきた頃でした。成瀬の都営住宅に車いす住宅ができ、最初に会の理事長を務められた関根さん夫婦が住まわれていました。重度身体障がいのお二人の送迎のお手伝いが会の結成のきっかけになりました。お二人が結婚するときには清風園の車を借りて私が運転したことを懐かしく覚えています。

その頃の町田市のやまゆり号は市内で4台しかなく、病院への送迎などが優先されてしまい、買い物やお出かけなどの楽しみにはなかなか使えない状況にありました。その当時、国立市で障がい者の人たちが自ら組織を作って送迎サービスを始めたという新聞記事を見て、関根さんと話を聞きに行きました。

その後町田市でもやろうということになり、半年間いろんな話し合いを行いました。その中でとにかく「無理をしない」ということが話題にたびたび上がりました。会として車両を保有した場合、維持費(保険・税金等)がかかってしまいます。お金集めに翻弄されてしまわないように、車は福祉施設から借りたり、自家用車を使ったりしようと決めました。

高橋さん:
読売新聞の記者をしていらした方が筆記用具とノートをくださって事務所を借りるまで、毎日かばんを持ち歩き、場所を転々としながら会を運営していました。最初の拠点は、市が作ってくれた市民サロンです。活動を始めて10年くらい経ったときに中町でクモの巣がいっぱいのビルを借りることができ、みんなで大掃除をしました。そこが事務所の始まりだったと思います。そこに入るまでの間は社会福祉協議会と一緒に転々とし、机や電話を使わせてもらっていました。

会では運転協力会員、賛助会員、利用会員の三者代表制を取っていて、2001年NPO法人化する前に三者代表制の方たちを中心に1年間NPOの勉強をしました。東京都の補助金なども活用し運営に充てていました。入会金とともに負担金を支払っていただくことで、事故が起きたときなどの賠償金などを積み立てて貯めておくことができました。

井上さん:
私は勤めは別のところでしたが、職場の先輩が町田ハンディキャブ友の会に関わっていて、やらないかと誘われ無理やりずるずると続けてきました(笑)。障がいのある方と関わるのは初めてではなかったこともあり楽しかったんです。やはり「ありがとう」と言葉をかけられるのはエネルギーになりますね。職場には職場の色があると思いますが、会に関わることで社会を見る目と自分の人生の方向がだいぶ変わりました。自分の足で稼ぎながら自分の暮らしに近いところで活動できるのが一番楽しいですね。私は20代後半から40年間関わってきましたが、全然損はなかったです。

 

Q2.NPOだからこそ生み出せた価値はなんでしょうか?

小竹さん:
設立前どういう活動をしていったら良いかということを話し合ったときに、行政はやはり通院の送迎など生活に関わる送迎がメインだったので、私たちは映画やコンサートなどの生活の楽しみにも関わるという理念を作りました。実際はハンディキャブも通院での依頼が多いのですが、生活の楽しみを支援するという理念はとても大切にしています。

井上さん:
道路運送法にもともとなかった制度を作ったというのはNPOの動きならではだと思います。以前は有料で人を乗せることは「白タク行為」と言われていましたが、研修を受けることで市民が移動サービスを提供できるという仕組みに変わり、やがて全国に広がっていきました。また、認可を取るには沢山の書類の提出が必要でものすごく大変だったのですが、住民の方々が取り組むにはあまりにも大変だということで、認可不要で有償運送ができるようになりました。現在は町田でも6~7カ所で行われています。今は介護タクシーなど企業も福祉輸送のサービスを行うようになり、移送サービスだけに取り組む自分たちの役割はなんだろうと考えないといけない時代になってきたと感じています。

全国的に広まるまでになったのは、さまざまな業種で働く人たちがボランティアとして関わっていたからです。いろんな方が関わっているからこそいろんな知識が得られました。書類や予算に強い人や法律に強い人が中心になって全国で動いたからこそ制度になったのだと思います。

 

Q3.組織運営をしていくときに大事にしていることはなんですか?

小竹さん:
いろんな方が参加している会ですから、とにかく話し合うということです。最初は車いすの方へのサービスとしてスタートしたのですが、視覚障がいの方も対象にしてほしいという話が出てきました。移動困難の方たちのために何ができるかということをみんなで考えながら会を運営してきました。

高橋さん:
皆さんの力、いろんな方面からの助け合いが一番です。会の中で、最初は賛助会員だった方も、高齢になり利用会員になったりします。順番に助け合いをするということなのだと思います。

井上さん:
今日のタイトルの「温故知新」に似た言葉で「不易流行」という言葉があります。「古き良きことをよく学び、今に合わせていきましょう」ということを大切にしています。私たちが受けた教育とまったく違うものを受けている今の人たちが同じ価値観なわけがないですし、会社という結びつきも今は難しい時代で、ボランティアや民間団体が縦割りで運営していても参加してもらえるわけがありません。だから皆さんがどういうニーズでここに来たのか、何をくすぐればこの方は一緒にやってくれるのかということを考え、会の運営に反映していければいいなと思います。ボランティアは土日だけでもいいし、年に1度のバリアフリーマップの調査だけでもいいよとし、これからも一緒にやっていけたらいいなと思います。

 

Q4.これからの世代の福祉やNPOを担う方へのメッセージをお願いします。

小竹さん:
超高齢社会では、地域の支え合いをボランティア組織でやっていくことが大切だと思っています。私の地元成瀬台では住民の会を作り約30年になりました。当時1000人くらいの会員がいて、ケアセンター成瀬を作り、今もボランティア活動をしています。

高橋さん:
若い方たちはいろんなことに興味が向いていてボランティアに興味を持つ方が少なくなっていると感じるので、学校教育で福祉についても知る機会をつくってもらえればと思っています。高校生のときに福祉に関心があるということで私が町田市障がい者青年学級でのボランティアを紹介した方は、今は立派な大人になり障がい者の福祉施設で働いています。私がそちらに仕向けたわけではないですが、福祉に触れてもらうためには教育が一番肝心だなと思いますね。

井上さん:
情報があまりにも簡単に手に入る時代になっているので、良い・悪いを体験せずに決める人が多くなっていると思います。以前は足で稼がないと情報にアクセスできませんでしたが、今はほんの数秒でみられますからね。ぜひ体験してから決めてほしいと思います。私はスマホを使いこなしていないので、つい最近までFacebookは若者の情報ツールだと思っていました。学生さんにInstagramやTikTokのことを教えてもらって驚きました。今は論文もスマホで書くそうですね。そんな時代だからこそ情報提供の仕方と同時に、情報に目を向けてくださった方に何ができるかということをしっかり考えないといけないと思います。

 

Q5.(参加者からの質問)支援の状況と内容の変化について教えてください。

井上さん:
かつては周りの介護者が必要だと思えばサービスを使うことができましたが、2000年に介護保険制度が始まり、介護度が点数化されるようになったことに伴って私たちも点数で判断しなければならなくなりました。昔は坂道で荷物を持って帰らなくてはいけない人を見ると「大変だね乗っていきな」と言えたのに、今は乗っていきなとは簡単には言えません。私たちの運行も条件をつけないとものすごい数の依頼になってしまうので、条件の中に当てはまる人にしかサービスを提供できません。大変な方もいっぱいいらっしゃるので、ニーズを拾えていない人がたくさんいると思います。ニーズは変わっていないけれど、対象者を見るものさしが変わってしまったということですかね。

高橋さん:
私も要介護度1ですが、会のサービスを利用したいと言ってもまだ利用会員にはなれません。介護保険があるからこそできることがいっぱいあると思うのですが、たくさんの人たちを大事にしていかなくてはいけないのに、ハンディキャブも捉えきれていない人たちがたくさんいらっしゃると思います。行政のほうでも考えてほしいです。

小竹さん:
最近の傾向を見ていると、例えば成瀬・成瀬台地区では成瀬お助けたいという互助グループができました。メンバーにはハンディキャブ友の会の研修会にも参加してもらいました。超高齢社会になり、そういったグループが各地域に広まりつつあることを実感しています。そうしないとやっていけないですしね。

■クロージング
みんなの経験共有会では、最後にゲストの方からメッセージを掲げていただき、クロージングとしています。皆さんにとって「町田ハンディキャブ友の会」とは?

 

左からトークをしてくださった小竹氏、高橋氏、井上氏。一番右は、現理事長の石井章夫氏。

 

小竹さん:この活動を通じて良き友、良き知人を得ることができました。
私も80歳と高齢になりましたけれども、友たちのおかげでこれからも楽しく生きていけるなという感じがしています。

高橋さん:いろいろな事があっても心のささえ
ハンディキャブの活動もボランティアも50代から始めました。今もそれが心のささえになっています。

井上さん:41年/人生
人生の半分以上ハンディキャブに関わっています。その時々で濃く関わったり薄く関わったりいろいろありましたけど、何かにつけて呼んでいただけたおかげで普通に仕事をしていただけでは味わえないような人間関係ができました。特に全然余裕のないときにも旅行に行って美味しいものを食べて帰ってくるという企画に連れて行ってもらえて助けてもらいましたし、社会ってこういうものなのかと自分の違う業種の方からもたくさんのことを学びました。

 


今回町田ハンディキャブ友の会の皆さんのお話を聞き、無理をせず周りを頼りながら長く組織を続けるコツを学ぶことができました。当日のアーカイブ動画をご覧になりたい方は、サポートオフィスまでメール(info@machida-support.or.jp)でご連絡ください。

 

過去の開催記事はこちらからご覧ください。

<2024年度温故知新シリーズ>
▼5月:みんなの経験共有会vol.17 「町田の冒険遊び場と子ども真ん中の取り組みのあゆみ」

https://machida-support.or.jp/report/report_vol-17/

▼7月:みんなの経験共有会vol.18~温故知新 「福祉の町田を担った市民たち ~町田すまいの会のあゆみ~」
https://machida-support.or.jp/report/report_vol_18/

<2023年度>
▼4月:みんなの経験共有会vol.11~「福祉」の枠を超えた事業に挑戦中!
https://machida-support.or.jp/report/230427-2/

▼5月:みんなの経験共有会vol.12~仕事と地域活動のバランスについて考える!
https://machida-support.or.jp/report/230524-2/

▼7月:みんなの経験共有会vol.13~「ボランティアやってみた・受け入れてみた!」
https://machida-support.or.jp/report/230703/

▼9月:みんなの経験共有会vol.14~「企業で「地域貢献」担当をしてみた!」
https://machida-support.or.jp/report/performance/report-230915/

▼2月:みんなの経験共有会vol.15~「専門性を生かして地域活動やってみた!★医療・福祉編★」
https://machida-support.or.jp/report/240215/

▼3月:みんなの経験共有会vol.16~「専門性を生かして地域活動やってみた!★保育・教育編★」
https://machida-support.or.jp/report/240321/

 

2022年度の過去開催回の実施報告は、下記ページからご覧ください。
*記事の最下部に過去回のリンクを掲載しています*
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon03/

 

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