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実施報告performance

実施報告 2023年02月02日

みんなの経験共有会vol.8(後編)~仲間と一緒に仕事をおこしてみた! 「労働者協同組合 経験共有会」を開催しました

1月26日(木)、町田市役所2階 市民協働おうえんルームにて、みんなの経験共有会vol.8~仲間と一緒に仕事をおこしてみた! 「労働者協同組合 経験共有会」を開催し、6名の方にご参加いただきました。

今回は協同労働という働き方について、ワーカーズコープ三多摩山梨事業本部本部長扶蘓文重さん、ワーカーズコープけやき所長内藤裕子さん、ワーカーズコープあおばケアサービス所長塩川洋さんの3名にお越しいただきました。前半は扶蘓さんによる「労働者協同組合」についてのプチ講座を行っていただき、基礎的な知識や考え方についてご紹介いただきました。後半はゲスト3名によるトークセッションを行いました。進行はサポートオフィス喜田が務めました。



2022年10月に施行された労働者協同組合の協同労働という働き方は、「全員が意思決定に参加できる」「一人でなく仲間と仕事を起こすことができる」「民主的な働き方できる」という点で注目されています。

仲間と一緒に仕事をおこしてみた!ポイントまとめ
1 協同労働は、みんなでお金も出す、口(意見)も出す、身体も動かす働き方。
2 法人を立ち上げる時に限らず、協同労働の考え方は団体運営に活かせる
3 意見反映は仕組みを作ると同時に、組合員同士の信頼関係も大切。

本レポートでは後編として、トークセッションの様子をご紹介します。
前編のプチ講座はこちらからご覧ください。


トークセッション>

内藤さん(自己紹介):
本町田の高齢者施設「ワーカーズコープけやき」で所長をしています。20年以上の歴史ある事業所で、介護保険法ができる以前から別の施設に勤めていた人たちが運営の仕方に納得がいかず、何人かで別事業所を立ち上げようとしたときに「協同する」、「出資する」、「分かち合う」という理念に共感して立ち上げたと聞いています。現在は、居宅介護・訪問介護・通所サービスの3つを行っています。施設は大きくなりましたが、立ち上げたころ民家で事業をやっていた家庭的な雰囲気を忘れずに、運営しようとしています。

塩川さん(自己紹介):
府中市の紅葉丘というところで地域密着型のデイサービス、訪問介護、居宅介護を行っている「あおばケアサービス」の所長です。2001年に介護保険法ができたとき、同じ講座を受けていたメンバーの中で自分たちで仕事がしたいという想いを持った人たちが立ち上げたと聞いています。私自身ははもともと福祉の仕事ではなく、広告会社のデジタル部門に勤めていました。入社して10年ほど経ったときにCG(コンピュータグラフィック)という方法が出てきて、しっかり学びたいと思い留学をしました。その後フリーランスとして15年働きましたが、グローバル化の影響を受けCGの単価が下がってきた中1人でやっていくのはなかなか大変で、人を雇うか違う道を考えるかと思っていたときに、友達に「福祉の仕事も向いてるんじゃないの?」と言われたのがきっかけで福祉の世界に入りました。当時は協同労働の意味は分かっていませんでしたが、市からの委託で事業をしている団体ということで入職しました。


Q1.
皆さんが協同労働を選択した理由と、協同労働の現場の一番の特徴だと思うことを教えてください。

扶蘓さん:
私は就職氷河期世代で、大学の先輩たちが就職活動を始めて「最初はこんなことがしたい」と思っていても、何百社と受けるうちにやりたいことが分からなくなっていく姿を見ていて、自分が分断されていくような仕事の仕方はしたくないと感じていました。就職先が決まらないまま大学を卒業しましたが、ある時新聞で協同労働の考え方について知りました。そこからどんな組織があるかを調べ、就職したところが今も働いている組織です。元は失業者が作った団体なので、入ったころは病院の掃除、公園の緑化などの仕事しかありませんでした。私も現場の清掃の仕事からはじめました。親には「大学まで出したのに…」と言われましたが、私にとってはどういう仕事をするかというより、「どういう働き方をするか」、「誰と働くか」ということのほうがウェイトが大きかったんです。協同労働の特徴は、組織の歯車のような働き方とは違い、1人1人の考えを大事にし合うところだと思います。

内藤さん:
学生のときに教員免許を取得し、就職先は決まらないまま卒業しました。自分が子どもの頃と違い、外で遊ぶ子どもたちが減っているなど、環境が変わってることが気になっていました。歳の離れた従妹に「どこで遊んでいるの?」と聞いたところ、「児童館だよ」と教えてもらい、近所にあった児童館にふらっと入って、中を見せてもらいました。区営の児童館でしたが、「近所に住んでいるならたまに手伝ってください」と言っていただいて、それがご縁で区の非常勤職員として働き始めました。その後、ワーカーズコープ・センター事業団が児童館や学童などの子ども支援分野も始めると聞き、入職しました。私自身は説明会で初めて協同労働について知りました。「出資をすることについてどう思われますか?」と聞かれたとき、「お金を出すということは自分の仕事にその分責任を持つということだと思います」と答えたのを覚えています。

特徴は、理事長や役員の方たちも現場で働いてきた人たちがほとんどなので、現場をすごく大切にしてくれているなということです。帰り道にも「お疲れ様~」と言ってもらえるなど、組織の一員にしてくれているというのを感じたことを覚えています。

塩川さん:
やっぱり株式会社も個人事業主もいい面・悪い面がそれぞれあります。株式会社は大きな会社だったので、研修をしっかりやってくれるというのはありがたかったです。みんなが業種のプロフェッショナルを目指している雰囲気があったので、自身が目指したいモデルになる人がいたのもありがたかったです。ただ、企画からすべてを把握して仕事をする、という働き方ではなかったので、コンセプトなど深いところまで携わることはあまりありませんでした。

フリーランス時代の一番のメリットは自分の都合に合わせて働ける点でした。ある程度仕事を自分で選ぶことができるので、自分がやったことのない仕事にトライしたり、いろんなことを調べて勉強したりと、自己研鑽は一番やったかなと思います。ただ、景気やグローバル化に左右され、単価が変わる状況には悩んでいました。それなりに年齢がくるとガタも来るので(笑)

協同労働という働き方について自分が一番いいなと思っているのは、自由にやっていいということ。法人から好きにやっていいよと言われることってあまりないと思います。仲間がいる安心感と自由があるということが両立しているのが一番の魅力です。


Q2.協同労働について初めて聞く方は、出資ってどのくらいの額?と気になる方もいらっしゃると思いますので、教えていただければと思います。

扶蘓さん:
ワーカーズコープ・センター事業団は、出資額は1口5万円にしています。新しい事業を起こすときの先行資金は自分たちで集める、という考え方です。事業所が立ち上がった後で入職する人もいるのですが、自分の給料の2ヵ月分は努力義務として増資を定めています。増資をすることで組織運営に携わろうということです。新しい事業をおこす仲間の挑戦を応援したいなと思ったら、さらに出資をするという人もいます。

 

Q3.協働労同の大事な理念である「意見反映」は、どうやって実施しているのでしょうか?具体的な運用の方法と、難しいなと感じるところを教えてください。

扶蘓さん:
効率性やスピードは落ちるなと思うこともあります。ビジネスの世界で働いてきた人には、「ビジネスチャンス逃すでしょ!」と言われたこともあります。

協同労働が活きた事例をお話すると、コロナ下で緊急事態宣言が出た際いろんな場所がクローズになりましたよね。そのときワーカーズコープ・センター事業団が運営している一時保育の事業所では、市内の全保育園が閉鎖になったんです。そのとき事業所では、「このような状況で本当に閉めていいのか?」という話し合いを行いました。保育園が閉まってしまうのは親御さんにとっても大変ですし、環境が変わることで虐待など懸念もあるのでは?という検討がされ、自分たちは感染対策をしながら開け続けようとみんなで決めました。時間はかかりますが大事な決断をするときにはみんなで納得いくまで話をして、揺るがない・強い判断ができるなと感じています。

内藤さん:
私は所長という役割ですが、年齢も経験も大先輩の方が多く、意見反映はいつも課題の1つです。工夫していることとしては、資料にして全員に渡す、時間帯によって出られない人がいる場合は、同じ会議を日中と夜の2回やるなどでしょうか。聞いてない・参加していない人は取りこぼさないようにしています。
仕組みでいうと、本部のほうから全員同意の書類を出してくださいという提出物があります。そのためにきちんと全員に伝えようとしますし、そういう場は担保されていますね。

塩川さん:
対等であるとか、誰でも意見を言っていいというのは会議の場でもちろん伝えていますが、30年かけて全国に何百の事業所があって、これだけの時間と労力をかけてもまだ「これが協同労働だ」と言えるものはありません。「自分たちなりの協同労働」を作っていけることが苦しいところでもあり、楽しいところでもあります。

うちは非常勤が多いので、全員で会議をすることは難しいです。大きな事項でコンセンサスを取る場合はみんなで時間をかけて行いますが、そのほかの小さなことはなるべく任せるようにしています。「誰かが●●したいという意見があったら自分のところまで上げなくていいから、他の詳しそうな人に聞いてみて反対意見がなかったらいいよ」と伝えています。小さなことをすべて把握するには限界がありますので。組合員同士の信頼関係を築き、信頼して任せるということを大事にしています。

喜田:
一般的な組織だと大きな事項ほど役員中心で決めて、小さなことは現場が決めるということが多いと思います。大きなことほど話し合いで決めるというのが特徴ですね。

 

Q4.(事前に参加者からいただいた質問)協同労働の活用が適している職種はありますか?

扶蘓さん:
意見反映・合意形成を大事にしている分、これまではケア・子育てなど労働集約型の仕事との親和性が高いと思ってきましたが、法律ができて新しく立ち上がった13団体の中ではケア・子育て分野は2団体だけです。他の業種だとキャンプ場の運営や映像/デザインなどの業態が立ち上がっています。お話を聞いたところ、みんなで合意形成をするという働き方にしっくりきたそうです。みんながお金も出す、口も出す、身体も動かすという体制が合っていると感じられたのだと思います。

塩川さん:
2~3年前の世界10ヵ国を対象とした働き方についての調査を見ていて、日本は他の国と比較するとかなり独特な結果だったのが印象的でした。「管理者になりたいか」という質問では「なりたい」と回答したのは約20%と、10カ国の中で一番低い結果(インドは約80%)でした。最も重要視する要素は「職場の人間関係」で、「高齢になっても働きたい」と答える人が多いのも特徴です。もしかしたら協同労働は日本社会にかなり合っているのかなと思います。

 

Q5.(会場の方からの質問)皆さんさらっとお話されていましたが、自分たちで出資して経営するというのは大変な努力があるのだと思いました。立ち上げの時の資金について教えてください。

扶蘓さん:
まずは自分たちで出資をしていきます。法律ができてから立ち上がった13団体の中でも、出資額は十万円単位~何百万単位というところもあるのでさまざまです。自分たちで出し合い、足りなければ銀行から借りるなどしていきます。増資については団体ごとに自由に決められます。

内藤さん:
初めて出資について説明を受けたときには、「出資は寄付ではなく、辞めるときには返還される」、「辞めたいと思ったときには辞められる」ということを説明してもらい納得しました。入職してだんだんこういうことなのか、と分かってきました。基本的には強制ではありませんので、それぞれの状況に合わせて無理しない範囲で、と思っています。

 

左から塩川さん、内藤さん、扶蘇さん。お三方とも具体的なご自身のエピソードを話しながら分かりやすく伝えてくださいました。


<クロージング「あなたにとって協働労働とは?」>
経験共有会では、最後にゲストの方からメッセージを掲げていただき、クロージングとしています。今回の一言は、「あなたにとって協同労働とは?」です。

塩川さん:自由と責任
自由を手に入れるためには、個人個人がどういった責任を分担するのか考え自覚することが大切だと考えています。

内藤さん:常に修行
たとえば役員さんと話して気づいたり、もともと株式会社で働いていた人が違いを教えてくれたりと、常にいろんなことを発見しています。それを継続していく必要があると思っています。

扶蘓さん:誰もが力をいかせる働き方 民主主義のトレーニング
子育て中の方、障害のある方、高齢の方などいろんな方が働く場はそれなりに大変ですし、話し合って合意形成をして決めていくということも難しい。話し合いをしない社会になっている中、民主主義に向かうトレーニングだと思っています。

 


次回は、みんなの経験共有会vol.9「事務局やってみた!~地域活動をスムーズに進めるためのコツ 経験共有会」を開催します。
詳細・申込はこちらをご覧ください。
https://machida-support.or.jp/event/salon202302/


過去開催回の実施報告は、下記ページからご覧ください。

▼みんなの経験共有会vol.1~法人を設立してみた「NPO法人・一般社団法人設立経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon04/

▼みんなの経験共有会vol.2 ~協働事業やってみた!「協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon05/

▼みんなの経験共有会vol.3~学生と一緒に活動してみた! 「学生との協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon06/

▼みんなの経験共有会vol.4~オンラインイベントやってみた! 「オンラインイベントのコツ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/salon07/

▼みんなの経験共有会vol.5~助成金にチャレンジしてみた!「助成金の活用経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon10/

▼みんなの経験共有会vol.6~マルシェやってみた!「マルシェ開催の経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon11/

▼みんなの経験共有会vol.7~まちカフェ!でチャレンジしてみた「まちカフェ!経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon12/

 

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