みんなの経験共有会vol.8(前編)~仲間と一緒に仕事をおこしてみた! 「労働者協同組合 経験共有会」を開催しました
1月26日(木)、町田市役所2階 市民協働おうえんルームにて、みんなの経験共有会vol.8~仲間と一緒に仕事をおこしてみた! 「労働者協同組合 経験共有会」を開催し、6名の方にご参加いただきました。
今回は協同労働という働き方について、ワーカーズコープ三多摩山梨事業本部本部長扶蘓文重さん、ワーカーズコープけやき所長内藤裕子さん、ワーカーズコープあおばケアサービス所長塩川洋さんの3名にお越しいただきました。前半は扶蘓さんによる「労働者協同組合」についてのプチ講座を行っていただき、基礎的な知識や考え方についてご紹介いただきました。後半はゲスト3名によるトークセッションを行いました。進行はサポートオフィス喜田が務めました。
2022年10月に施行された労働者協同組合法の協同労働という働き方は、「全員が意思決定に参加できる」「一人でなく仲間と仕事を起こすことができる」「民主的な働き方できる」という点で注目されています。
本レポートでは前編として、「労働者協同組合」プチ講座の内容をご紹介します。
後編のトークセッションはこちらからご覧ください。
<プチ講座:扶蘓文重氏(ワーカーズコープ三多摩山梨事業本部 本部長)>
昨年の10月1日、労働者協同組合法が施行されました。今年の元旦には東京新聞の一面に掲載されましたが、あまり周知が進んでいないのが課題だと思っています。今日は労働者協同組合法の内容と、それがどういう働き方をする団体なのかということをお伝えできたらと思います。
法律ができる前から、協同労働という働き方をする団体は多様に存在してきました。ワーカーズコープ、ワーカーズコレクティブや、べてるの家などがそれにあたります。現在、日本では10万人以上が働いていて、協同労働には40年以上歴史があると言われています。このように協同労働の団体が社会的存在として根付いてきたことが、今回法律ができる際の大きな根拠になったと言えると思います。
協同組合がどのようなものなのかについてもお伝えしたいと思います。株式会社は営利を目的とする一方で、協同組合は「事業を利用することによる組合員の生活の安定や向上」を目的としており、非営利なのが特徴です。出資配当にも制限があり、すべてを配当するのではなく、組合員の新たな働く場の創出や研修などに使われます。もう一つの違いは「誰によって」という点です。協同組合は出資をする人・利用する人・運営者が一体となっているというのが特徴です。
今回法律ができたのは、社会的な背景も大きいと思っています。近年の労働環境を見渡すと、働くことは自分を成長させる・生活を豊かにする・人とつながるなどの側面もある一方で、働くことが苦しい社会になっていると思います。働く人の4割以上が非正規労働だったり、働くことに夢が持てない学生・働くことを拒否している若者たちが多くいたりと、自分を社会の枠組みに当てはめることが苦しいと感じる人が増えていると思います。また、人口減少・少子高齢化・シャッター街など地域の持続性が脅かされており、地域社会が疲弊しているということも感じています。このような状況も、協同労働が求められた理由の背景としてあるのではないかと思っています。
労働者協同組合法は、一言で言うと「新しい団体法」です。これまではざっくり分けるとすると営利であれば株式会社、非営利であればNPO法人でしたが、その中間くらいにあるもう1つの選択肢ができたと言えると思います。
第1条に大事なことが凝縮されています。解決したいテーマ(生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状)、組織の基本原理(出資・意見反映・組合員自らが事業に従事)、達成したい目的(多様な就労の機会の創出、持続可能で活力ある地域社会の実現)について書かれていますので、ぜひご一読いただければと思います。
基本原理について説明すると、出資と組合員が事業に従事するという点は理解できるけど、「意見反映とはどういうものなのか?」というご質問をよく受けます。意見反映とは、共益権の行使を通じて経営に参加することです。共益権はなにかというと、組合員が組合の意志決定に参加し、組合の事業活動を是正・監督する権利のことを指します。
労働者協同組合法では、組合員が意志決定に参加することが担保されています。各団体の定款において「どのように意見反映をするか明記する」ということが29条に定められていますし、「理事は総会で意見反映をどのように行ったのか報告する」というルールもあります。各組織に、意見表明・意見反映ができる環境と信頼関係を作っていくことが求められているということだと思います。
法律の主なポイントは以下の通りです。
・出資口数に関わりなく1人1票。1口いくらにするかはそれぞれの団体が定款で定める。
・出資配当は禁止。労働配当のみ行う(働いた分量に合わせて配当する)。
・地域と事業領域には制限なし(⇔NPO法人は20分野に限られている)。労働者の派遣事業のみ禁止。
・設立における許可や認可は不要。法務局に登記をするだけなので1ヵ月ほどで設立が可能(⇔NPOは認証を経ないと立ち上げられないので3~4ヵ月はかかる)。
昨年10月以降、13団体が新しく立ち上がりました。労働者協同組合法は労働の在り方や経済、民主主義の在り方を問い直すようなインパクトがあると同時に、働き方の選択肢が新しく生まれたと感じています。これから「地域で働きたい」、「社会貢献したい」、「自分の得意なことを活かしたい」など働く者の主体性・自律性を高める働き方が生まれていくのではないかと思っています。
協同労働は広がりのある働き方です。NPOや企業組合から労働協同組合に移行する、新規部門を協同労働にする、という方法に限らず、協同労働の考え方を運営の中で取り入れるなど、いろんなところで活かせるのではないかなと思っています。
後編では、トークセッションの様子を公開しています。ぜひこちらからご覧ください。
次回は、みんなの経験共有会vol.9「事務局やってみた!~地域活動をスムーズに進めるためのコツ 経験共有会」を開催します。
詳細・申込はこちらをご覧ください。
https://machida-support.or.jp/event/salon202302/
過去開催回の実施報告は、下記ページからご覧ください。
▼みんなの経験共有会vol.1~法人を設立してみた「NPO法人・一般社団法人設立経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon04/
▼みんなの経験共有会vol.2 ~協働事業やってみた!「協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon05/
▼みんなの経験共有会vol.3~学生と一緒に活動してみた! 「学生との協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon06/
▼みんなの経験共有会vol.4~オンラインイベントやってみた! 「オンラインイベントのコツ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/salon07/
▼みんなの経験共有会vol.5~助成金にチャレンジしてみた!「助成金の活用経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon10/
▼みんなの経験共有会vol.6~マルシェやってみた!「マルシェ開催の経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon11/
▼みんなの経験共有会vol.7~まちカフェ!でチャレンジしてみた「まちカフェ!経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon12/