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実施報告performance

実施報告 2021年12月28日

【開催レポート*第二部鼎談全文*後編】まちだづくりサロン特別編「私が動く、地域が変わる~今見つめ直す市民活動の価値と未来」

2021年10月23日、わくわくプラザ町田で行われた、まちだづくりサロン特別編<私が動く、地域が変わる~今見つめ直す市民活動の価値と未来>。第一部の講演会では、NPO法設立の立役者の一人山岡義典さんに講演をいただきました。

第二部では、法政大学時代の山岡さんの教え子であり市内でNPO法人プラナスを運営している高井大輔さん、サポートオフィススタッフ橋本空の法政大学多摩キャンパス3世代鼎談を実施しました。ここからは、第二部鼎談の全文の後半部分をご紹介します。

 

*第一部講演会の全文はこちらからお読みいただけます

*第二部鼎談の全文の前編はこちらからお読みいただけます

 

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橋本 空による「私と市民活動」
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*町田市地域活動サポートオフィス喜田(以下喜田):

鼎談前半では、NPO法人プラナスの高井大輔さんからお話しをいただきました。続けて町田市地域活動サポートオフィスの橋本から、自己紹介を兼ねて学生団体の時からずっと続けている市民活動の紹介をしてもらいたいと思います。

*橋本空(以下橋本):

皆さんこんにちは。町田市地域活動サポートオフィスの橋本空と申します。山岡先生が教鞭を取られていて、高井さんが先輩にあたる、法政大学現代福祉学部を2021年の3月に卒業し、4月にサポートオフィスに入職しました。実は1998年生まれでNPO法がちょうどできた時に生まれです。また、高井さんからは学生時代、一緒にご飯に行かせていただいた時、山岡先生との1対1のゼミの話はよく伺っていたので、今日の鼎談もすごく楽しみにしておりました。

 

自身が地域活動に興味を持ち始めたきかっけを話し町田市地域活動サポートオフィスの橋本空。

私は大学時代に地域福祉に関心を持っており、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取ることを目指して勉強と実習を重ねてきました。地域福祉は地域に出れば自ら学べると思っていたので、ゼミは「企業と社会」という、企業のCSR、社会的責任や社会企業とかソーシャルビジネス、ソーシャルイノベーションといった分野を学んでいました。もちろん企業と社会を考える時にはNPOも市民も1つの大きなセクターなので、その時に学んでいたのはこういうことだったのか!と痛感する日々です。

学生時代は、ボランティア活動・地域活動をしていました。大学1~2年生の頃は高井さんが立ち上げて職員もされていた法政大学多摩ボランティアセンターに所属していました。多世代交流とか、大学と地域の接点を持つという文脈にすごく関心があったので、町田市の相原を拠点に、地域の方と活動をしていました。

折しも東日本大震災や熊本地震があった後に学生になったので、被災地支援の活動も続けていました。大学3年生の時、ボランティアセンターの学生スタッフとして活動するのもすごく楽しかったのですが、もっと自由に大学の外に出て地域の皆さんと一緒に、対等な立場で街の一員として活動していきたいなと思い、その時いい仲間に出会えたこともあり、同級生3人と一緒にへりぽーと(https://peraichi.com/landing_pages/view/heliport/)という団体を立ち上げました。活動としては、「相原に空き家があって、その空き家を使って地域の人が地域の居場所作りを始めるらしい」という情報を聞きつけて、私たちも一緒にやらせてくださいとお願いをして始めたのがスタートです。地域に拠点を持って活動することに憧れがあったくらいの軽い気持ちで団体を立ち上げましたが、卒業した今も仲間たちと一緒に活動を続けています。

団体を立ち上げ、後輩も少しずつ増えてきた時に、自分が地域で楽しく活動してきて、すごく得るものがあったからこそ、自分と同じようにこれからの若い世代や後輩の方たちも、市民活動や地域活動を体験する人がどんどん増えていくといいなと感じるようになりました。私は大学の職員さんや先生、地域の方などに運よく声をかけていただいけたり、嫌々でも引っ張ってくださる方がいたりしたので活動を始められましたが、やはり活動の最初の1歩を踏み出すのはすごく大変なことだと思っています。そこをサポートできる活動が何かできないかなということで、学生と地域をつなげるような活動を始めました。

私が町田市地域活動サポートオフィスに入職したきっかけが大きく分けて2つあるので、私と市民活動というテーマを絡めてお話できればなと思っています。

1つ目は、大学時代に町田の方をはじめとして、市民活動していたり、地域のために活動していたり、隣近所の誰かために活動している人たちにたくさん出会うことができ、いろんな人の考えを知ることができました。こういう人たちがこれからも地域で安心して楽しく活動し続けられる地域作りに関わりたいなと思ったことです。

その感覚は、活動を始めた当初は全然分からなかったんです。私が1年生の頃に始まった町田市相原町での活動で、竹に穴を開けて竹灯籠を作り、それを駅前や公園において光らせるといった地域活性のイベントがありました。

私自身は最初は竹にも興味がなかったですし、なんで地域の人たちは手のかかる竹灯籠にこんなにも力を入れているのかな?と全然意味が分からなくって(笑)。でも、竹を並べて点灯して、全員でカウントダウンして、パッと灯りがついた時、わっとその場にいた皆さんが盛り上がったんです。その時に「ああ、地域の人たちはただイベントをやるということだけじゃなくて、その先の地域のつながりとか、地域の盛り上がり、地域の笑顔を見据えてやっていたんだな」とやっと気づくことができ、私にとっての1つの価値観になりました。そういう活動があり続けられる地域作りに関わりたいと思っています。

 

町田市相原町で展開された竹灯籠。

2つ目は、活動続ける中で、市民活動とか地域活動って、いろんな人に出会えて、すごく人生を豊かにするし、セーフティネットになるなと感じていることです。これから先、例えば結婚して子どもが生まれても、町田には子育てカフェがいっぱいあると知っていている、そういう一つひとつが、「人生を安心して送っていけるだろうなあ」という自信につながっています。こういう安心感を与えられるのは市民活動ならではだと思っていますし、一緒に感じられる若い世代を増やしていきたいなと思っています。

「私と市民活動」という今日のテーマを改めて考えた時に、私にとって市民活動は自己表現の1つだったなと感じています。私は自分の意見を人前で言うのは苦手で、人前じゃなかったとしても意見を言うことにすごくエネルギーを使ってしまうのですが、市民活動や地域活動を通してその場に居続ける、この地域に関わり続けることができている。今日も微力ではありますが、こういう話を皆さんに聞いていただく場を作り続けるということが私にとっては自己表現だし、私にとっての市民活動ってこういうことだとこの対談のおかげで思っています。私からのお話は以上です。ご清聴ありがとうございました。

 

 

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お二人のお話しに対して山岡さんのコメント
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*喜田:

ありがとうございました。ちょっと上の世代は、若いお二人の話に感動した方もいらっしゃるのではないかと聞きながら思っていたところでした。さて、ここまでお2人のお話をお聞きしました。山岡さんは実際に高井さんの拠点であるプラナスにも訪問されているので、そんなことも交えてまず山岡さんから2人の活動への感想をいただければなと思います。

 

 

*山岡さん:

面白かったね。高井くんはね、卒業論文でボランティアセンター立ち上げの立派な企画書を卒論で書いていて、「あら、大したもんだねぇ~。本当にできるかなあ」と思っていたら本当にできちゃったんですよ。僕が初代の所長を務めて、高井くんもそこのスタッフになって、相原だけではなく、かなり遠くの地域も含めて地域と学生たちを結び付けてきたことを思い出しました。

高井くんはね、やっぱり好奇心が強いっていうのかな、身軽にバイクで関西のほうまで行ってきたって言うからね。特に関西には、阪神淡路大震災の時に活動した人はその後NPO作って頑張っている人が何人かいるのですが、そこを周ってきたって言うからああそりゃすげえなあって。あとはやっぱりすごく勘が良いんだな。「この人だ」と思ったら全く躊躇せずに会いに行っちゃうんだよね。そういう身軽さと同時に、人を見るセンス、そういう力があるんだなと改めて思いました。

まだ私が大学にいた時、プラナスを作ったっていうのは知っていたんだけど、その後全然知らなくてね。今日初めて里山の作業所を見せてもらったんです。ものすごく素晴らしい場所でした。農家の人たちとどうして出会えたのか知らないけど、そういう出会いも彼のいいアンテナだね。メロンの話もすごくいい話だと思います。町田の商工会議所は、メロン作りの指導にものすごく力を入れているんです。多くのNPOはあんまり商工会議所と関わっていないのですが、やっぱり地域経済組織は非常に重要だと思います。もっともっと商工会議所とNPOの活動を結びつけたらいいですよ。

今回の高井さんなんか、いつの間にかメロンの委員会の協力者になっていて、それを作業所の仕事の一部にして、素晴らしいデザインの袋になって。そういうセンスがあって、今のような状況になっている。時代を見る目となんていうか、物怖じしない、だけど荒っぽくはない。一つひとつを丁寧にやっている。自分の目で見て初めて「そっか、高井さんがやりたかったのはこういうことだったんだ」と現場で確認して今日ここへ来ました。非常によかった。僕のゼミの卒業生でNPOやっている人何人かいます。皆活き活きとしてね、本当この人たちが食えるようにならなかったら僕の責任だけどどうしようって思っていましたが、よかった(笑)。今日見て本当に安心しました。

 

それから、橋本さんのNPO法ができた時に生まれたなんて、ああもうそうなんだと感慨深かったですね。橋本さんもZ世代っていうね、デジタルネイティブ世代ですね。この間Z世代についてエッセイ書いてほしいって言われて書いたんだけどね、ああそうか、橋本さんみたいなZ世代っていうのはNPO法ができてから生まれた人なんだなっていうのをすごく感じました。特に最後におっしゃったセーフティネットの話は、僕らがNPO法を作る時には全然考えていなかったけれども、今後はさらに実感を持って地域の中につながっていくと思います。

今僕は、7年前から家の前で毎朝ラジオ体操をやっています。40~50年近く前からやっていて、当時の主催はもう80代くらい。そこで体操をし始めて、体操の前に神社の境内の掃除を3人くらいでやっているんだけど、そういうことをやっていると、どうってことはないんだけど淡々とつながってくる。いわゆる地縁組織でもないし、だからといって何か社会のためにやりましょうという活動は何にもやってない。ただひたすら毎朝ちゃんと起きて、少々雨が降っても体操すると。これをコロナの時も一切休まずにやりました。「距離を取れば大丈夫だよ、マスクだけしてやろう」と言って。コロナの時代にああいうことをやっていたことは、健康上、かなり良かったと思う。常識からみるとこの時代にあんな朝から集まっているなんてと言われたかもしれない。やっぱり、そういうのはセーフティネットなんだよね。すぐに役立つかどうか、あと社会のためになるとかならないとかじゃなくって、我々が淡々としてやっていることは自分たちの心身の健康にもなるし、1つのゆるやかなアンテナにもなる。そういう小さなたくさんの活動が1人でもあれグループでもあるということが、本当に重要な意味を持っているんだなということがよく伝わってきました。短い言葉であんなにコミュニティの在り方について表現できるってことはやっぱりZ世代だなあと感心しました。

 

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高井さん、橋本から山岡先生への質問
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*喜田:

ありがとうございます。では今度はお二人から活動をする中で「こんなことモヤモヤしているな」とか、「これを大先輩に聞いてみたいな」ということがあれば聞いていただければと思います。高井さんからお願いしてもいいですか?

*高井:

実はさっき移動中の車の中で少し聞いてしまったんですけれども(笑)、今モヤモヤしているのは情報発信なんです。特にSNS。例えば企業がやると売り上げが上がれば良い情報発信だと思いますが、NPOだとそうとは限らないじゃないですか。いろんな人に発信するとか、受け取ってもらうということを意識しすぎて、万人受けするような内容になってしまったり、ちょっと相手に寄った情報発信になってしまったりするのは、NPOにとっていいのか悪いのかと思ってしまうことがあるんです。情報発信をうまくやっている団体さんや、もしくは先生の中で気を付けたほうがいい点などがあればお伺いしたいなと思っています。

*山岡:

ソーシャルメディアの使い方っていうのは、僕はもう鈍いんだけどね、それこそZ世代が1番敏感だろうね。

1つは、人を傷つけるような発信にならないようにしないといけないということを僕は常に言っています。なんとなくこれは「うちの団体にケチをつけているな」とか、「批判しているな」とかが分かるような嫌な感じの発信は避けたい。それともう1つ、組織が発信しているのか、個人が発信しているのか分からない発信がありますね。個人が発信しているものは組織の責任にはならないけれども、組織としての発信は、よっぽど注意をして責任者がはっきりしないといけない。そのあたりを明確にしない発信はだめだよとを言っています。

高井さんの質問にあったように大勢の人に分かるような最大公約数的な情報が良いのか、ターゲットを絞った情報がいいかということに関しては、僕は後者のほうがNPOには良いんじゃないかなと思っている。良い情報を絞って100人が聞いてくれて、その100人がそれぞれまた100人に伝えてくれれば1万人になる。はじめから1万人に伝えると非常に浅い情報になってしまうね。だから100人に伝えてくれそうな確信犯にきちっと伝わる情報が良いんだろうと思います。

それからソーシャルメディアの凄さっていうのはね、今回感じたんだけどね、高井さんとほぼ同時に大学院を出て今市民社会創造ファンドでこの間から事務局長やってる女性がいる。彼女は自分のお父さんが持っていた木造アパートね、これをなんとか活かしたいんだと大学時代から言っていてね。実際職員でありながら旦那と一緒にシェアハウスを作ったんです。そこに色んな若いアーティストたちの出会いの場を作り、今や3軒ほどシェアハウスというか、たまり場みたいなものを作っている。今度そのうち1軒の1階部分が公園に面しているので、カフェを作りたいって、いろんな人が出会えるカフェ作りたいって。

そのために資金がないからクラウドファンディングを初めて、400万円目標でやったら予定よりも支援が集まり追加募集しているようなくらいの勢いで。僕もいくらか送っていったんだけどね。自分たちが出会ったり関わってきたりしたものすごくいいターゲットに情報を送っているんだと思うの。そういうのはやっぱりね、クラウドファンディングなんかは金を払うくらい強い関心を持っている人にきちんと情報を届けることを考えれば、1万人より100人に届いたほうが意味があるし、その後も、ずっと応援してくれると思うんです。そういう点で、こだわりのある発信がNPOらしい発信ではないかな。

それをするためには、自分が持っているメーリングリストとか、名刺とか、いろんな情報をしっかりと確保していくのが重要だと思います。だけど僕らの世代は技術的にはデジタル世代には全然敵わない。なんかあったら逆に教えてください(笑)。

 

*喜田:

ありがとうございます。1つ私からもそのことで追加して聞いてもいいですか?「批判をしない」と先生はおっしゃっていましたが、NPOの役割として「これは社会的に間違っているよね」ということは発信していかなくてはいけないという側面もあると思うんです。そのような社会に訴えるべき時は、どうしたらいいのでしょうか?

 

*山岡:

そういうのはあると思いますね。実際にある団体の活動を批判することで裁判になったという事例もあります。やっぱり人を傷つける時は、本当に良いか悪いかっていう主観的な判断がありますから、自分の判断だけで発信する時はちゃんと覚悟を決めてやらないと名誉棄損になりますね。そこは注意したほうがいいと思う。

 

*喜田:

人を傷つける可能性がある時は覚悟を持って、社会的に批判する必要があるという覚悟を持って取り組むということですね。

 

*山岡:

そうですね、これは絶対許せない!と思ったらね、言えばいい。これは裁判覚悟で。

 

*喜田:

ありがとうございます。じゃあ次は橋本さんから山岡さんに聞いてみたいことがあればお願いします。

 

*橋本:

はい、これは私のモヤモヤでもあり、法政大学の4年生の後輩にも言われてさらにモヤモヤしてしまったところなんですけれども、山岡先生の最後のお話にもあった「課題解決の活動だけじゃなくて、自分たちが楽しい・良いと思うからやる、という価値創造活動もすごく大事だよって」というお話に関連する質問をさせてください。Z世代だからか皆さんより若いからか、「なんのためにやってるの?」とか「結果は?成果は?」とか「将来のためになるの?」と聞かれてしまうことが多くて、それに答えに詰まっちゃう私もモヤモヤするんですけど、自分が楽しいからやっているからいいじゃん!とか自分がいいと思っているからいいじゃん!だけでなくて、そう言ってこられた方ともうまく対話をして、自分の想いをどういう風に伝えたらいいのかなと、ヒントをいただけたらなと思っています。

 

*山岡:

NPO法ができた時は課題解決のための道具だと思ったことはなかった。もちろん社会課題、今起こっている内容を解決するのも大切だけど、同時にそういう問題の発生を予見するとか、あるいはそういうものと関係なくいろいろな人の「やりたいこと」をやっている。そういうことが将来の社会課題の発生を抑止する、抑えるという役割を果たしている。その部分はなかなか説明がつかないけど、重要な役割なんです。いろいろなやりたい人が、いろいろな価値観でさまざまな活動をしている社会は安全性が高いし、いざとなった時に強いと思うんですよね。

だからすでに明らかになっている問題を解決するだけでは、未来のためには不十分。特に社会的価値の創造や新しい考え方を提案するのは、NPOのほうが企業や行政よりは得意なはずなんですよね。だからその部分がNPOとしては重要なので、NPOが皆社会的課題の解決だけに取り組み始めたら、まあ面白くない世界になるよねっていうのは言っているところです。「自分としては何の役に立つか分からないけど、私はこれにこだわってやるよ」と言うほうがいい。そういう議論を皆でやることが重要だと思う。

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参加者の方からの質疑応答
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*喜田:

ありがとうございます。最後にもう一度お三方から一言ずついただく時間を取りたいと思うのですが、その前に会場の皆さまからもご質問や感想をいただければと思います。せっかくなので、全世代から一言ずついただけると嬉しいです。

 

Q1.

町田第一小学校お父さんネットワークの活動をしております。40代男性会社員の、地域に1番出てこない属性だと思います(笑)。私たちお父さんネットワークは、子どもたちの笑顔のために活動しているのですが、裏目的はお父さんが地域の友達・知り合いを作るというものです。なぜかというと、我々の父親の世代は60歳になれば定年になるので地域に入って自治会活動があるのですが、今の40~50代が75歳まで働くと言われている時代、自治会長さんと話した時に「いや~70歳になって入られても困るんだよね~」と言われていました。だから今の40~50代っていうのは、どうやって地域に入るのかということを自分で考えないといけないんだなと感じています。20~30代の話を聞くと「会社だけが人生じゃない」というのが分かっているのですが、本当に困ったことに40~50代の男性は考え方が一番「昭和」なんです(笑)

お父さんネットワークとは、いわゆる「親父の会」なのですが、子どもたちと一緒に遊ぶ、お父さんの得意分野を活かすという活動をやっています。そのあとにお父さん同士で飲むんですけれど、話をするうちに仕事で大変なのは自分だけじゃないんだなと気づくんです。先ほど橋本さんのお話しにもありましたが、私たちの活動も地域のセーフティネットになっているのかなと思っています。

ただ町田には小学校が42校あるのですが、私が調べたところ14%くらいしか親父の会はないんです。行政の人と話すと高齢者やお母さん、子どもは色々担当課がありますが、お父さんの担当課はないですねと言われます。実際活動する中でも、仕事じゃないんだから活動自体も組織っぽくしたくないよねと、本当にゆるゆる活動しているんですけど、本当にそれでいいのかなとも思ってきて…。親父の会がない学校にもっと広げたいという気持ちもありましたが、今日の山岡先生の講演をお聞きすると、成果が出ない活動でもいいのかなとも思いはじめてきました。活動をやっていく中で、今は見えていない「何か」が出てくるのかなとも感じておりますが、そのような感じで活動をしていっていいのでしょうか、というとりとめのない質問です。

 

A1.(山岡さんより)

それで充分だと思います。特に僕の周りの人も40~50代くらいの頃は仕事の中で色々やることはできるけど、仕事以外に何かやっているという人はそんなにいない。だけど何かちょっとしたつながりが仕事以外の人と出来ていると、50~60歳になった時に、いろんなことができますよね。だから「絶やさない」ってことが大切なんじゃないかな。

ゆるやかなつながりがたくさんある社会がいいんですよ。その中からかなり密度の高いつながりがあるNPOとか社会的にいい取り組みが生まれてくるので。僕もラジオ体操の集まりを始めてからそう思うようになった。まずは無理しないで続けることだなと思います。

 

 

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Q2.

今日は貴重なお話をありがとうございました。私は大学3年生で、主に地域活性化や住民交流の促進を目的としているサークルにいくつか所属していて、その中で八王子市の舘ヶ岡団地で住民同士の交流や活性化を図るような活動をしています。内容としてはイベントの実施などを行っていて、最近は防災に関連した活動をやろうということで、自宅での備えについて考えたり、団地の住民交流が廃りつつある中、いざという時の住民同士の連絡の仕方などを色々考えています。そういった活動をするにあたり、イベントに参加される住民さんが少なかったり、減っていったり、世代が偏っていたりすることについて問題に感じています。このような活動をするなら、たくさんの方に来ていただいて色々話し合ってこそかなと思うので、多くの人に参加していただく方法をいつも考えていました。ですが今日お話を伺っていて、最初から大多数向けにするよりも、来ていただいた人を大事にする、人から人へ広めるということも大事なのかなとも感じました。今後どのように参加される方を増やし、より良いものにしていくかということについてアドバイスをいただけたらと思います。

 

A2.(高井さんより)

いろいろな参加者が来ないけれど、このままでいいかどうかという話ですよね。僕だったら、もしかしたら山岡先生と答え違うかもしれないですけど、参加者をいっぱい呼ぶためにどうしたらいいかを考えますね。盛り上げるために何しようかなって。

例えば思いつきですが、まちの真ん中で焼き芋を焼いたら、皆焼き芋が好きだから出てくるんじゃないかなとか(笑)。ただ先ほどから「課題解決よりも楽しく活動する」という話が出ているように、深刻になりすぎて主催者側がつまらなくなってしまうよりは、皆が楽しめるためにどうしようかと考えていくと、次第と人が集まってくるかなと思っています。

地域の方よりも学生のほうがきっと盛り上げるのが得意だと思うので、皆や自分が楽しめる企画を考えることでうまくいくのかなと。すでにやっているかもしれませんけど。答えになってますか(笑)?僕も舘ヶ岡団地は気になっているので、力になれるところがあったら協力したいです。

A2.(山岡さんより)

先駆的な活動はね、人は集まらない。僕は谷川俊太郎さんの「言葉遊びの会」という活動を応援したことがあるんです。最初の回に参加者が1人しか来なかったの。障がいを持ったお子さんとお母さんでね。最初は双方ともにがっかりしたんだよね。でも1対1で本気になって、障がいのある方との対話をやっているうちにそれがものすごく有名になっていきました。本当に先駆的な活動は最初は、人は集まらないものですよ。だけど真剣になってやっているとそれを聞いた人は、「すごかったわよ、あの会に行ってみたら」と言って誰か友達を連れてくる。先駆的な活動が大きく発展した例はたくさんありますからね。誰でもいいっていうより感激をしたかどうかですよね。そういう例はたくさん知っています。

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Q3.

じゃおクラブ多摩・田園に所属している者です。私たちは町田市と川崎市などのエリアで活動をしています。じゃおクラブ全体では神奈川県と町田市全てをカバーしています。地域活動というよりも高齢者男性の会です。私たちは会員を男性だけに限っています。地域に戻った時に男性の居場所を作るというのを目的にしてやっています。農園活動、テニ、ゴルフ、街歩きもあり、オンライン飲み会までやっています。

最近は高齢化が進んできており、クラブ内でリーダーや運営する側が少なくなってきており、特定の方に負担がかかってくる。活動に出ようとしても、出られなくなってくる人がどんどん増えてくる。だいたい平均年齢が75歳くらいなのです。新しい方に入っていただこうとすると、最近70歳くらいまでは働いていらっしゃる方が多いので、なかなかその歳くらいの方には入っていただけないという社会情勢もあり、会員集めに非常に苦労しています。

その中で工夫をしながら、なんとか活動を維持しようしています。例えばテニスの時は、特定の人に対する時はその人から1メートル以上離れたところにボールを飛ばしてはいけないという特別ルールを作り、1メートル以上離れたところに飛ばすと相手の1ポイントになるとか(笑)。このような状況に対して山岡さんはどういうお考えを持っておられるのか、伺えたらなと思っています。

 

Q3.(山岡さんより)

あまり深刻に考えなくていいんじゃない、成り行きでいいんですよ。僕がやっているラジオ体操の会は平均年齢80超えているんじゃないかな。何の義務もないけど、毎朝ちゃんと皆来るね。雨が降っても来る。いつの間にか来なくなる人もいるけど、時々70歳過ぎくらいの新しい人が入ってくると「おお~若い人が入ってきたな~」と歓迎しています。女性が8割くらいで男性が少ない。「この活動はどうなるのかね」「成り行きだよね」「集まれる時まで集まっていこうよ」と話しています。成り行き任せでも別に問題ない。だからまあ5人を切ったら解散するとか、10人切ったら解散するとかを決めとけばいいんじゃないかなと思います。

僕らの会には90歳までラジオ体操に来ていて、90歳になった正月にぽとっと亡くなっちゃった人がいます。いないねって言っていたら息子さんが「正月の朝起きたら親父亡くなっていたんだよ」って。その前日、大晦日の朝まで体操に来ていたんだよ。ああこれはいい人生だなと思ってね。僕もそうなりたいなと思っているんだけどね。だからあなたもなんにも悩むことないです。

 

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鼎談に登壇いただいたお三方からのメッセージ
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*喜田:

今日の講演会のテーマは「市民活動の価値と未来」でしたが、まさに成り行き任せで、そこが楽しみの源泉なのかなと感じました。ではそろそろ時間となりますので、最後にご登壇いただいたお三方から一言ずつコメントをいただければと思います。

 

*橋本:

今日は秋のイベントが重なっていてお忙しい中、お越しいただきありがとうございました。山岡先生と高井さんのお話も聞いて、今まで活動をやってきてよかったなと思いましたし、これからも頑張りたい、これで良かったんだなと感じる時間になりました。今日来てくださっている参加者の皆さんの中にもそう思われた方が多かったのではないかなと感じています。

私自身、市民活動・地域活動を始めた時のドキドキ感とか、新しい環境や新しいコミュニティに入る時の緊張感などは今でも覚えていますし、これからもその気持ちを忘れず、活動をし続ける人を応援したいなと思います。そして、私自身も今後もチャレンジしていきたいなと感じる時間でした。今日はありがとうございました。

 

*高井:

今日はありがとうございました。つい最近まで大学に通っていた気分だったので、まさか3世代対談の「真ん中の世代」として呼ばれるようになってしまったのかと、残念なのか嬉しいのかという感じです。貴重な機会でした。これからは真ん中の世代と意識しながら活動をしていきたいと思います。

自分のやっていることに対して、山岡先生は直接的にコメントをくださるというより、「次あれとかいいんじゃない?」と間接的に提案してくださっていました。なのでやっていることがいいのか悪いのか分からないまま学生時代を過ごしていましたが、今日自分の活動に対して先生からいろいろなコメントをいただき、目がうるっとしてしまいました。本当に10年間やってきて、大変なことも楽しいこともありましたが、続けていてよかったです。またあと10年間頑張っていきたいなと思います。皆さんありがとうございました。サポートオフィスの皆さん、山岡先生、貴重な機会をありがとうございました。

 

*山岡:

高井さんはずいぶん大人になったなあ(笑)。やっぱり学生時代は「あれダメ、これダメ」と言っちゃダメなんです。やる気なくしちゃうから。それが僕の教育方針。

本当に今日は午前中NPO法人プラナスの現場を見せてもらったし、お土産のメロンも貰ったことも良かったし(笑)、こうやって皆さんとお会いし忌憚のない議論が出来て良かったです。やっぱりこうやって共に話し合えるのが自然だよね。そういう機会がまた持てたら呼んでください。90歳くらいになってくると、どうなるかわからないけど(笑)

とにかくできる限り皆さん、楽天的にやったほうがいいですよ。心配したらきりがない。眠れなくなっちゃう。そういうこと僕もしょっちゅうあるんだけどね。でもNPOや市民活動であまり苦しまないほうがいいなあという感じがしています。以上です。

 

*喜田:

ありがとうございました。山岡さんの本の中で「市民社会は市民一人ひとりが自己責任で参加し、市民一人ひとりの想いを実現していく社会」という表現がありました。この言葉を読んで、地域活動をしている方々が「これでいいんだ!」と元気を貰い、また明日から活動していただけるような場を今日作れればいいなと思い、本日の講演会を開催させていただきましたが、目的は達成できたかなと満足しています。

積み重なってなくなるものもあるし、また生まれるものもある。そういうものがたくさんある社会がいい社会で、それが市民社会なんだよというような山岡さんのメッセージを一人ひとりが明日から実現していければいいなと思っております。

 

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