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実施報告performance

実施報告 2022年04月01日

【実施報告】『公民館のしあさって』読書会 at 町田を開催しました

3月31日、TENT成瀬にてサポートオフィス初の読書会を開催し、16名の方にご参加いただきました。取り上げた本は『公民館のしあさって』。「公民館」に魅せられた一人のエジプト人がエジプトに公民館をつくってしまったノンフィクションです。

本書はいわゆる社会教育法のもとで定義されている公民館だけではなく、公民館的なもの(人が集まる、つながる、何かが生まれる)を含んだ広い意味での公民館について書かれた本。
当日は公民館のしあさってキャラバン隊として、現在全国を訪れている制作者チームの熊井晃史さん、西山佳孝さんと、きんじょの本棚ファウンダーである金城美由紀さん、サポートオフィス喜田の4人のトークセッション形式で行いました。

 

          左から喜田、西山さん、金城さん、熊井さん

 

満員御礼の本セミナーでは「たまたま」、「偶然」、「コモンズ」、「ハードルの低いアウトプット」、「VUCA時代の事業評価」、「地域の心地いい居場所づくり」といったキーワードが飛び出し、時間をオーバーする熱のこもった2時間のトークセッションでした。

以下、当日行われたトークセッションや会場から寄せられた質疑応答の中から、印象的だったお話しをピックアップしてご紹介します。


熊井さん
公民館の職員さんのような、「そこにいる人」をなんて呼ぶか問題ってありますよね。ティーチャー、ファシリテーター、ジェネレーター? ジェネレーターは、生成変換する人のこと。時代はたしかにそっちに進んでいると思います。図書館も法律で定められた図書館ではなく、DIYでみんなで自分ごと化した図書館を作っていくという動きがある。美術館もプライベート美術館というものがある。「プライベート公民館」はないよねということも、この本をつくる起点となりました。

西山さん
これからはコーディネーター的、ファシリテーター的存在がすごく大事ですよね。 那覇市繫多川公民館の館長で、『公民館のしあさって』第1章の著者である南さんを現地で見ていると、何の仕事をやっているのか本当にわからないんですよ。席に全然座ってなくて、ずっと誰かとしゃべっている(笑)。

一番すごいな~と感心するのは、地域の方の話を2度でも3度でも新鮮な気持ちで聞いているところ。その都度真剣なリアクションを取っているんです。「2度も3度も同じ話をしているということは、その人は何か伝えたい・残したいことがあるのではないか」という話し手の気持ちを読み解き、そのAさんの話をBさん・Cさんに伝えて良い方向に進めていく。毎回地域の人に新鮮に向き合って、絶妙なコーディネーションをしているんです。

喜田
本の中で「コーディネーターの仕事は雑談だ」という話が出てくると思います。サポートオフィスで仕事をしていると、世の中でイノベーションが生まれるときって、「面白いことをやる人」と「面白がる人」が必要だなと感じます

面白がって、面白い人につなげる。それこそがジェネレーターなのかなって思います。状況によって仕事の縛りで楽しくないこともあるかもしれないけど、時には二枚舌で。ベースには「偶然を楽しむ気持ち」が必要なのだと思います。バランスですよね。

西山さん
そうそう、何でも無目的でやったほうがいいんですよ。課題を発見しようとしてバックキャスティング(現在から未来を考えるのではなく、「未来のあるべき姿」から「未来を起点」に解決策を見つける思考法)をしていると課題は解決しない。遊びとか余白などが大事なんです。社会をよくしようと思うなら課題解決なんて捨てなきゃだめですよ。自分たちが楽しいからこそ物事が前に進むんだと思います

熊井さん
目的の話で言うと、学校では狙いをクリアにする教育法が流行っていますよね。例えば今日の授業の狙いは「絵具の使い方を学ぶ」とするなら、水だけを使って画用紙に表現した子が怒られる。狙いから外れると「エラー」になってしまいますよね…。

教育だけでなく、こういう現象がいろんな現場で生まれてしまっていますが、「ほんとにこれでいいのか?」という思いがあります。人生って「エラー」の固まりだからね(笑)、そういう風に思っていた方が良いなと思うんですその点、本ってうらやましくて。生身の人間同士が目的無しにぶつかりあうとうまくいかないこともあるから、間に入るカウンターが必要じゃないですか。本が間に入ってくれる。

金城さん
私も「これをやるには、あれをこの日までにやって」という育ち方をしてきましたが、きんじょの本棚は本当に無目的で始めました。目標を決めなかったわけです。私が大事にしているきんじょの本棚で大事にしている合言葉は「行き当たりばっちり」!
目的がないから失敗がないんです。本を借りてもらうことが目的じゃないし、何かやったことに対して周りの人が反応してくれるのが嬉しいですよね。その気持ちをシェアしているから楽しいんだと思います

西山さん
今の世の中は目的と理由を突き詰めすぎましたよねこれはもう罪ですよ。目的を作ると、そこにいていい人と悪い人が出来てしまう。

本を作って、だいたい人から言われるのが「なんでエジプトなんですか?」ということ。ミギードさん(『公民館のしあさって』の第2章著者で、エジプトに公民館を作った方)がエジプト人だったから、と言うと大抵キョトンとされます。なんか、そういう理由ばかり求められるのは罪だなあと。

熊井さん
西山さん・・・今日はもう革命家にしか見えませんよ(笑)


会場からの質問
企業や行政に身を置いている人はどうしても事業を進めるにあたり「数値」に縛られる部分もあると思いますが、「数では測れない価値」をどう説明していくか、納得してもらえるか、皆さんの考えを教えてください。

熊井さん
めっちゃ分かります。牧野先生(『公民館のしあさって』第3章の対談で登場)にも同じ質問をぶつけたところ、「むずかしいよね、評価どうすんだよ?」という話になります。ただ牧野先生は、例えば公民館でのポジティブな会話の量を測れないか?とおっしゃっていました。

牧野先生はPDCAサイクルは辞めよう派で、AARを勧めています。AARとは、Anticipation Action Refletionの頭文字をとったアメリカ軍で生まれた手法。チェックをするのではなくレビューする。後でこういう意味になったじゃん!とみんなで意味付け・意義付けをするといいんです。
ただ、突然「部長、PDCAはもう古いんですよ!」というとぶっ飛ばされますけどね(笑)

西山さん
評価をするということに隠された嘘にだまされないように、怒られない程度にたまに嘘を暴くことが必要じゃないでしょうか。例えば500人の参加者と10人の参加者のイベント。なぜか今の世の中では500人集客したほうが成功というような錯覚がありますが、「500人の講演会が成功したね」というのはアウトプットであり、アウトカムではない。でも講演会に参加したのが10人だけでもその10人がアクションを起こすほうがよっぽどいいですよね。これが本の中で言うところの、社会転覆活動です!(会場、笑)

 


■参加者からいただいた感想

・イベントのテーマが自分の関心事にとても近くてもありがたかったです。 「目的ありき、頭でっかち」になりすぎないように、自分のやりたいことをふらっとやっていきたいと思います。

・毎日の仕事は、目的とか合理的といった「計画」ばかりで、遊びも余白もないのが現実です。だからこそ、今後は仕事以外の活動もどうやって遊びや余白を入れていけばいいのか?と、これからの活動のヒントが色々ありました。


イベント終了後も、外で語り合う方が多くいらっしゃいました。

その様子を見て熊井さんは「盛り上がったライブの後のようだね」と話されていました。本を読んだ方やイベントに参加してくださった方とまた改めてゆっくり話したい気持ちになる会となりました。

ここでご紹介したお話しに興味を持たれた方は、ぜひ「公民館のしあさって」を読んでみてくださいね!

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