【実施報告】第5回まちだのコーディネーター研究会を開催しました
3月3日、第5回まちだのコーディネーター研究会を開催し、対面6名、オンライン8名の計14名の方々にご参加いただきました。
学校、福祉、地域、市民活動など様々な場面で名称に「コーディネーター」と付く職業があり、また職業としてではなくても地域活動の様々な場面で「コーディネーター」的な役割を担う方も多くいらっしゃいます。本研究会では毎回ゲストにまちだのコーディネーターに必要な「専門性」をインタビューし言語化すること、そしてコーディネーター同士の情報交換の場となることを目的として開催しています。
インタビュー項目は、6月に開催した第0回コーディネーター研究会の参加者の方々と共に考えた質問項目です。
今回のゲストは、下記のお二人でした。
<今回のゲスト>
・世羅田 京子さん(ART55主宰/アーティストとまちをつなぐコーディネーター)
・田中 亮太郎さん(町田市生涯学習センター職員/ひとと学びをつなぐコーディネーター)
以下、詳細なインタビュー内容を公開します。
<自己紹介>
田中さん 町田市生涯学習センターの田中と申します。センターでは、市民の方の学習を総合的に支援するための講座やイベントの運営、学習情報の収集、学習相談など幅広い業務を行っています。その中でもコーディネーター要素が強いのは学生団体の皆さんとのイベントづくりや市民団体の講座づくりの伴走支援などです。
世羅田さん ART55という町田で55人のアーティストを紹介するプロジェクトを行っています。2023年からCOMMUNE BASE マチノワというコワーキングスペースを舞台に始めた企画です。若いアーティストさんの活動場所を提供するということと、町田市内にあまりギャラリーがなく小回りの利くアートスペースがあるといいなと考えていたので、その両方を叶える企画として運営しています。2025年からは市内のいろんな場所で展示をするようになり、それまで自身がコーディネーターという意識はなかったのですが、外に出てみて「コーディネートしてる!」と感じました。その他にも、1dayギャラリーをやってみたり、養蚕にはまってみたり、町田くんのまちだガイドBookという漫画を描いてSNSにアップしたりしています。
<インタビュー内容>
Q1. ご自身のコーディネートスタイルについて、「理論派・経験派・感覚派」の割合で表すと、どのようになりますか?
田中さん 今は感覚6:理論1:経験3です。まだ足りない部分もあるので、今後は理論をもう少し増やしていければと思っています。何かを学びたいとご相談いただいても前提の知識が足りないとつないだり情報提供することができないと感じることがあるので強化していきたいです。
世羅田さん 感覚6:理論1:経験3ですかね~。田中さんと全く一緒ですね。やっぱり最初にやろうと思ったときはパパパッと始めてしまいます。現在は39人までアーティストとやりとりしているので、経験値はだんだん上がっていっていると思います。理論はさすがに1くらいは必要かなと思って入れていますが、深い意味はありません(笑)。理論的な人には理論で返さず、常識で返すようにしています。若いアーティストにはほとんど何も言いません。基本的には感性を大事にしたいので、ふわっふわの泡を扱うような感じで付き合います。常識的に難しいところは伝えます。
Q2. コーディネーターの役割を後輩や仲間に伝えるとしたら、どう伝えますか?
田中さん 「+αの提供ができるか否か」だと思っています。というのも、僕はいろんな方に「一緒にできませんか?」とか「会場どこかありませんか?」と聞かれることが多いのですが、それに対して「会場ありますよ」とだけ回答するのはそっけないと思っていて。そこに+αで「広報手伝います?」とか「一緒にやりませんか?」という話ができると関係性が近づくし、この人に聞いたら何か返してくれると思ってもらえると思っています。
これは自分の経験に基づいていて、スーパーで店員さんに「これありますか?」と聞いたときに「ないです」とだけ言われたことがショックに感じたんです。自分だったら「ここにはないけどあっちにあります」とか「電話してみましょうか?」とか言うだろうなと思ったのが気づきになり、自分は+αで返すように心がけています。
世羅田さん アーティストさんにはなるべく自由にやってほしいと思っているのですが、感情面ではアーティストさんと近づきすぎないようにしています。事務的なことを順番に伝えて、先ほどの通り常識や責任などはしっかり説明するようにしています。一度展示でまずいなと思った経験があったので、そのあとに規約を作り、その次の展示からは規約を元に伝えるようにしています。
あともう一つは、常識が通じない相手からは絶対に逃げてください!ということです。周りから何を言われようと、その場では逃げたほうがいいと思います。
Q3. これまでにコーディネートの過程で直面した困難や課題はどのようなものでしたか?また、それをどのように乗り越えましたか?
田中さん 一番覚えているのは、生涯学習センターに異動してきて「これぞコーディネーター」と言えるのが学生さんとのイベント作りです。僕自身学生時代に地域活動の経験があるわけでもなく、コーディネートの経験があるわけでもなく、前任者もいない中でどうやっていけばいいのかという状態でした。乗り越え方としては、まずは学生さんと同じ立ち位置で、スーツを着ない、口調を親しみやすくするなど気を付けました。このラインなら「できる・できない」を判断する経験も足りなかったので、上司や協力で入ってもらっていた外部の方に相談するようにしていました。
相手に頼ったり相談するまでに、下準備として関係性を作っておくことが大事だと思っています。そのために学生さんの名前を覚えて自分から話しかけにいったりするようにしていました。
世羅田さん 蓋を開けてみないとアーティストさんがどんな作品を持ってきてくれるかわからないので、その点だけ毎回心配です。一度だけ作品がすごく少ないということがあって驚いたことがあります。そのときはアーティストさんご自身で何とかしようと大事な作品も提供してくださって、これでいいのかとドキドキしました。
Q4. コーディネーターの成果を具体的に感じたエピソードと、それを評価する指標について教えてください。
田中さん 市民団体の方が講座をつくる「市民提案型事業 講座づくり★まちチャレ」という事業は、講座を作ったことがない団体さんの講座づくりを職員が伴走する仕組みなのですが、ただ講座をやるだけではなくて、「自分たちの活動のPRもしてみてはどうか?」ということを提案しました。すると後日その会に新規の見学者が10~15名来たそうで、やってよかったなと思いました。指標としては、「関わった人たちの活動が広がったか」ということをいつも気にかけています。
世羅田さん まず第一段階としては展示が大成功!ということですね。アーティストさんも私たちも集客がしっかりできて目標人数に達成できたらばっちりです。その先に、次回の展示につながったり、イベントをやることになったりするとさらに良いです。昨年まちの歴史をテーマに絵を描く方がいてART55で展示していただいたのですが、その派生イベントとして実際の街歩きイベントが行われることになりました。協力者も現れ、その人たち主導で進めていただくことができました。つるかわ図書コミュニティ施設「つるぼん」で2人のアーティストさんに展示していただいたのですが、その後お1人は鶴川セントラル商店街での展示につながり、もう1人はお祭りで版画のワークショップに呼ばれていて、広がりが嬉しいなと思います。また、TENT成瀬では会場を提供してくださっていて3ヵ月おきくらいに今3回やっているのですが、壁面半分くらいを使っていいよという話だったのですが、展示していい範囲が広がりかなり本格的なアート空間になりました。
Q5. コーディネーターとして活動する中で、最も大切にしている価値観や判断軸は何ですか?
世羅田さん みんながやりたいことができるように交通整理をするのが大事だと思っています。
田中さん 主体性が大事だと思っているので、「やりたい」とか「できたらいいな」ということをできるだけ汲むようにしています。相手が主体性を持てているかということを心がけています。
Q6. 地域資源を開拓する際、どのようにアプローチしていますか?
田中さん 僕はめちゃめちゃイベントに行くようにしています。月1~3回くらいは何かしらに参加しています。市内だけでなく他市のイベントに行ったり、直近だと手話の団体に関わったときに紹介されたデフリンピックに行ってみたりしました。以前はそういったイベントにはあまり行かないほうでしたが、前任者には「足で稼げ」とよく言われていたので、それを実践するようにしています。イベントに参加するのはとても楽しいです。毎日同じ遊びをしていた時期と比べたら、新しいことに出会えるのは嬉しいです。
世羅田さん アーティストの出会いとして美大の学園祭と卒業展にとりあえず足を運びます。そこでスカウトすることはあまりないのですが、必ず巡るようにしています。相模原のSUPER OPEN STUDIO(SOS)などにも参加して、いい人を釣り上げるようにしています。ART55はアーティストの参加人数が増えてきたので、最近はいきなりこちらから声をかけたとしても、アーティスト側も安心して受けてくださいます。会場はありがたいことに前の活動で知り合った人が声をかけてくださいます。難しいと感じているのは、町田近隣でアートに関心のある人の掘り起こしがうまくいっていないことです。ごくごく普通にアートを見てみたいという人が足を運ぶというまでには達していないと思うんです。55人までに達成できるかわかりませんが、頑張ります…!
当初はART99(アーティストを99人紹介する)の想定だったのですが、一緒にやっている方にもうちょっと減らしなさいと言われて55人にしました(笑) 今40人まで決まっています。また弱気になってきて「あと15人本当に行けるのかな…」とも思っているのですが、あと少しなので頑張ります。55人というのは100人カイギを参考に、ゲストの数で区切るのはすごくいいと思ってマネをしました。
Q7.つながることが難しい方とどうつながりをつくっていますか?
世羅田さん つながるのが難しいのはやはり町田近隣でアートに関心のある方々です。アートもいろんな種類があるので、とても美しいものもあれば難しいテイストのものあります。うちの展示はジャンルがガタガタしているんですね。駅前のパリオさんは3世代で楽しめるというコンセプトなので、いつ行ってもその雰囲気です。そこがART55の難しいところですね。
田中さん 無理強いはしないことです。その前提で、一旦歩み寄ろうと思います。つなげるときには双方の想いが一致したら間に入りますが、無理しないようにしています。
Q8.コーディネートの活動において、参考になった書籍や映画、印象に残っている研修などがあれば教えてください。
世羅田さん 事前にこの質問を見せていただいたときに、20代の時に観た「バベットの晩餐会」という映画を思い出しました。もう一度見てみたら、とっても感動しました。バベット像こそ私が目指すものかもしれないと思いました。歳を重ねてまったく視点が変わってしまって、若い頃はおいしいものを食べさせてあげてランラン♪という映画だと思っていたのですが、すべてを失ったバベットから「今の自分のコミュニティで最高のものを提供したい」という思いを感じました。バベット像に近づいていきたいです。
田中さん コーディネーターのためにということでは、とくに無いです。ただ、映画がとても好きで、たくさん観るのですが、何が役立つかわからないのでいろいろ見ておくということが大事だなと思っています。
<参加者から当日寄せられた質問>
Q ART55の資金はどうされていますか?
世羅田さん 立ち上げ時にはCOMMUNE BASEマチノワから資金援助をいただき、会場費についても共同イベントということで賄っていただいているのですが、それ以外は自腹です。これもバベットの晩餐会に通ずるものですね。金額は私くらいの年齢の人の習い事2つ分くらいですし、やりたいことをやるのに必要だからまあいっかこれくらい、と思っています。アーティストさんは制作費も運搬費も自腹なんです。私もだんだん家のお金で使うのは悪いなと思いパートを始めたのですが、パートにはまってしまって昨年忙しくなりすぎてしまったので、今は仕事量を減らしました。
Q 部活動の地域移行とそのコーディネートについてお二人はどうお考えですか?
世羅田さん アーティストにお金が回る仕組みにもなりうるので、いいと思います。また、アートに興味のある子どもが居られる場所ができれるのはすごくいいと思います。アートの世界でもコーディネーターをいっぱい育てないといけないと思っていて、毎年美術系の学校からは多くのアーティストが世に出ているのでその内5%くらいは必要だと思っています。
田中さん 個人的には自分も学生時代に部活をやっていた経験から、専門性のある方に教われるほうがいいと思います。そのうえで、コーディネーターのような真ん中に立つ人が1人だけだと働きかけが難しく俗人化していってしまうので、まずは仲間集めをしていくのがよいと思います。
Q 世羅田さんであればアートと何かを、田中さんであれば学びと何かをコーディネートしていると思いますが、それぞれ「アート」と「学び」をどういう風に捉えてつなげているのですか?
世羅田さん 「脳への刺激」ですね。強烈なんですよ。脳学者が書いるのですが、アートに触れると脳の違う血流が巡るんですよ。脳の刺激とはあまり言われないと思うんですけど、心の刺激にもなりますし、世の中を受け止める幅が広がります。ちょっとした景色でも色彩を細かにとらえるには見る力も必要ですし、空間認知能力も上がりますし。出来上がったアートはリズム感がきちんとしています。美大生はみんなキラキラしていてお肌が綺麗じゃないですか(笑)。脳からの刺激がすごいんだと思いますよ!
田中さん 僕自身がこう感じたからというのがありますが、「楽しい」ということを伝えたいです。僕は勉強が嫌いなのですが、自分に合った学びを見つけるとすごく楽しいんだと思います。まずは楽しいと出会ってもらうというのが大事だと思います。
研究会の最後には、ゲストのお二人に「あなたが「あこがれる/めざすコーディネーター像は?」とお聞きしました。お二人の答えは以下の通りです。今回は2つずつご用意いただきました!

世羅田さん
「七転び八起き」:いろいろありますが、最後に起き上っていれば勝ちということで選びました。
「未来から振り返ったときに、あればバタフライエフェクトだった…という人」:バタフライエフェクトというと環境破壊というイメージもありますが、蝶のファサッという羽ばたきで世界が変わるということなので、町田でそういうことができないかなと思っています。
田中さん
「日進月歩」:小さな行動がのちに積み重なっていくかなと思い、これを選びました。
「可能性を育てる伴走者」:これは僕が憧れる上司のことを指しているのですが、何かしたいときや何か困っているとき、あえてすぐそこに手を出さずに、本当に困ったときに手を差し伸ばしてくださいました。僕もそんな人になりたいなと思っています。
▼これまでのまちだのコーディネーター研究会の開催レポートはこちら
第1回 https://machida-support.or.jp/report/performance/coordinator_vol1/
第2回 https://machida-support.or.jp/report/performance/coordinator_vol2/
第3回 https://machida-support.or.jp/report/performance/coordinator_vol3/
特別回 https://machida-support.or.jp/report/performance/cordinatormarugoto/
(まちだのコーディネーター研究会@〇ごとつながりミーティング)
第4回 https://machida-support.or.jp/report/performance/coordinator_vol4/
