まちカフェ!インクルーシブ研究会vol.8「 デフリンピック日本初開催!「聞こえない」を知ろう」を開催しました
11月6日(木)、まちカフェ!インクルーシブ研究会vol.8「デフリンピック日本初開催!「聞こえない」を知ろう」を開催し、31名の方にご参加いただきました。講師は、町田市聴覚障害者協会、手話サークルまちだ、JSLアミーゴ倶楽部、町田ろうなん協会、手話べり場Sの豪華5団体です。
11月15日~26日までデフリンピックが日本初実施をした中、町田の団体の方々に活動内容のほかに、そもそも「聞こえない」ということはどんなことか?、「ろうの文化」のこと、手話でのコミュニケーションのことなどをお話いただきました。当日は、オリエンテーリング日本代表の辻悠佳選手にも動画で競技についてご紹介いただくことができました。詳細は以下よりご確認ください。

登壇者の方々にずらっと並んでいただき、参加者の質問に答えていただきました。
インクルーシブ研究会vol8 結論と考察
1 ろうの文化と聴者の文化は異なるものということを理解してコミュニケーションを
2 それぞれの障がいの状態に合わせたコミュニケーションを
3 手話通訳者が間に入って話すときも、目線を合わせるのはろう者本人と
考察:コミュニケーションの手法や文化が違うという前提を理解することで相手とのコミュニケーションが進みます。手話通訳や筆談できるツール(紙やホワイトボード・筆記具等)を準備しておくなどもできるといいですね。
<各団体の紹介>
■町田市聴覚障害者協会(発表:砂田安貴子氏)
町田市聴覚障害者協会は、聴覚障がい者たちが社会の中で問題なく暮らせるように、どういう環境がいいのか考えていく役割を持っています。福祉の向上、社会参加、生活の中でとても必要な手話通訳者の養成など、ろう者が暮らしやすい環境が作れるよう活動をしています。目的を達成するためにはいろんな組織との協力が不可欠で、各組織にお力添えいただいています。一番大きなのは町田市役所の力です。全国に組織があり、全日本ろうあ連盟、東京都ろうあ連盟、その下に町田市聴覚障害者協会があります。手話サークルまちだも一緒に活動しており、今年で創立52年目になりました。今後の目標は、手話言語条例の制定です。皆さんが使われているような日本語と同じように手話が使えるようになってほしいと思っています。
■手話サークルまちだ(発表:満足 京子氏)
27年前に、町田市聴覚障害者協会の尽力により当時5つあったサークルが統合されてできました。常に聞こえない方とともに、手話を通して活動しています。昼の部は毎週水曜日、夜の部は毎週金曜日に、町田市民フォーラムで活動しています。ボランティア団体でもあるので、町田市のボランティア連絡協議会などにも参加しています。今はデフリンピック成功に向けて頑張っています。手話言語条例の制定も同じように目指しています。
■JSLアミーゴ倶楽部(発表:林原 丈文氏)
団体名の由来は、J:Japan、S:Sign、L:Languageの頭文字で、アミーゴはブラジル語で「友達」という意味です。4年前に設立した団体で、聞こえない人と一緒に交流しながらイベントを行うことが多いです。春はお花見、夏はBBQ、秋は社会科見学、冬はクリスマスなど。第2・第4日曜日の午後に活動しています。場所はいろんなところでやっています。詳細はInstagramでご確認ください。
■町田ろうなん協会(発表:林原 美佳氏)
当協会の活動目的は、ろう・難聴の方々が暮らしやすくなることです。困りごとをなくすために、いろんなところと交渉しています。詳しい活動についてはInstagramをご覧ください。12月6日(土)午前に、町田消防署において防災訓練を行います。町田消防車には手話ができる方がいるので、その方と一緒に行う予定です。筆談やコミュニケーションボードを使ってみます。午後には教養講座を行います。病気の予防等の講演会を行うので、ぜひご参加ください。
■手話べり場S(発表:内堀 章子氏、高橋 節子氏)
「手話を公用語に」を旗印に、手話が練習できる場所を提供しています。サークルという形をとらずに、好きなときに来て好きなときに帰ってもらうことができます。きっかけは、ろう者の友達二人に、「手話カフェやりたいなあ」と言われたことです。サポートオフィスに相談したら、生涯学習センターの中の公民館カフェをお借りできることになりました。初開催は2023年3月のころです。Sは手話、節子さん、私(章子)の頭文字を取っています。スタートしてから参加者がものすごく増え、会場が使えなくなりました。その後、スターバックスにご相談して現在は町田パリオ店、東急ツインズEAST店で開催させていただいています。
<聞こえないを知る> (発表:砂田 安貴子氏)

砂田さんによる説明の様子。視覚的にも聴こえの状況がわかるような資料をご用意いただきました。
聞こえる人は、音や声がはっきり聞こえると思いますが、「伝音声難聴」の人は音が小さく聞きにくい状態です。見えにくいと同じような感覚だと思います。また、「感音性難聴」の人は何を言っているかわからない、はっきりと音をつかむことができないという状態です。この2つが重なっている方もいます。
聴覚障害の種類は大きく分けて4つあります。実際のコミュニケーションは一人ひとり違いますので、個人に合わせて理解してもらえると助かります。
| ろう者 | 生まれつきもしくは幼い頃から聞こえない方のこと。発声練習や言 葉を学ぶのが難しい。補聴器を使っても音は聞こえるものの、言葉 を理解するのが難しいという特徴がある。日本手話・日本語対応手話を使う。 |
・日本手話 ・日本語対応手話 |
| 難聴者 | 難聴者の場合は、補聴器をつければ言葉を聞き取ることができる。意識を向けていないと聞き逃してしまうこともある。若い世代だと早期発見・早期治療のため、聴者と同じように聞こえている方もいる。0歳のときに新生児スクリーニング検査をする方もいる。文字情報や日本語対応手話を使う。 | ・文字情報 ・日本語対応手話 |
| 中途失聴者 | 病気や事故等である程度成長した後に失聴した方のこと。今まで聞こえていたけれども聞こえなくなってしまったので障害受容が難しい場合がある。言葉や文字の理解は問題ない。 | ・文字情報 |
| 重複障がい者 | 生まれつき聴覚だけでなく他の障害がある方のこと。聴覚障害だけでなく、他の障がいにより、言葉の獲得が難しい場合もある。他の聴覚障がい者と比べてコミュニケーションの壁が大きい。 | 文字情報、触手話、弱視手話、指点字、身振り等 |
続いて、ろうとしてのアイデンティティのお話です。「聴覚障がい」と聞くと大変不便そうというイメージがあるかと思いますが、私たちはろう者の社会で生きてきたので、不便ではありますが不幸ではありません。先輩たちのご苦労があって築いてくださった道があります。聴覚障がいと一言で言っても、いろんな障がいがあります。お互いに尊重しあって認め合うことが大切だと思います。一人一人が大切にされる社会を目指していきたいです。
<ろう文化とは> (林原 美佳氏)
1995年、ろう者は非常に誤解を受けやすい、言語的少数者であるということを示す「ろう文化宣言」をしました。
ろう文化について代表的なものをご紹介します。例えば人を呼ぶときに聴者の方々は声をかけると思いますが、ろう者は手招きしたり、肩をたたいたり、第三者に頼むこともあります。聞こえる人同士では、ちょっと違和感があるかもしれませんね。講演会では、お互いの手話が見えるように半円形式にイスを配置することが多いです。インターホンは皆さんのお家では「ピンポン」と音が聞こえると思いますが、ろう者は光で察知します。視線はしっかり目を合わせたうえでコミュニケーションをします。慣れない方はドキッとする方も多いのではないでしょうか?でも、大事なコミュニケーションの要素なので、目を合わせていただけると嬉しいです。

林原さんによる説明の様子。ろう者と聴者に違いについての「あるある」をわかりやすくご紹介いただきました。
ろう者と聴者の「ズレ」で代表的なものをご紹介します。
●ろう者の「はい」
→OKではない。
●「コピーはいいよ」
→「いいよ」だけでは、相手が何を意味しているのか判断がつきません。「お願い」の意味なのか、「不要だ」という意味なのか、はっきり伝えてほしいです。例えば、「コピーは要らない」と具体的に言った方が良いです。
●細やかなニュアンスは手話で伝えるのが難しい。
→ろうの言語はローコンテクスト(直接的で明確な表現)です。日本語はハイコンテクストなので、特有の遠回しな言い方をしますが、ろう者には理解しづらいです。「行きたいのは山々ですが」➡「山々ってなに!?」となりますので、「行きたいけど今日は用事があってむり」とはっきりと伝えた方が良いです。
●時間の表現
「10時過ぎ」と言ったらろう者は何時何分かわからないです。ろう者には「10時10分前に来てください」ではなく、「9時50分に来てください」と、具体的な時間を伝えるようにしましょう。
●手話通訳者を連れてきた場合
通訳者を介した対話の場面では、通訳者か、聞こえなく手話を使っている方かどちらを見たらいいかわからないという悩みもよく聞ききます。見るべき相手は「聞こえない人」です。高齢者や障がい者の方が介助者を連れているときもそうです。通訳者や介助者はあくまでもサポートする立場。通訳者がいる場合も、ろう者に向かって話をしてほしいです。ろう者は視野が広く両方見えていますので、ご安心ください。
<東京2025デフリンピック> (発表:砂田 安貴子氏、辻 悠佳オリエンテーリング選手)
本当は辻選手が来てくれる予定でしたが、東京都庁への表敬訪問のためそちらに行かれていますので、辻選手の動画も交えながらデフリンピックのご紹介をしたいと思います。デフリンピックとは、オリンピックやパラリンピックと同様に国際的なスポーツ大会です。80ヵ国から3000人ほどの選手が集まり、21種の競技を行います。1924年フランスでの大会が初開催でした。出場資格は、聴覚障害がある方(55デシベル以上)。デフリンピックはパラリンピックと比べて歴史の長い大会です。デフリンピックが始まったきっかけは共生社会への第一歩です。スポーツを通して聞こえないということを理解してもらうことが目的の一つとして挙げられます。今回は、11月15日~26日までの12日間の開催です。会場は東京と福島(サッカー)、伊豆大島(オリエンテーリング)です。入場無料・予約不要なのでもしよろしければぜひお越しください。

デフリンピック日本代表である辻 悠佳選手から競技について説明していただきました。
辻選手が出場するオリエンテーリングはドイツ語で「走る+方向を知る」を組み合わせた競技名です。地図を見てコントロールポストを回るスポーツで、その時間を競います。「フォレスト」と「アーバン」があります。フォレストは伊豆大島、アーバンは日比谷公園で行います。オリエンテーリングはヨーロッパで生まれたスポーツです。軍隊の訓練から始まり、スポーツとして楽しまれるようになりました。1つ目はフット、2つ目はトレイル、3つ目はスキー、4つ目はマウンテンバイクに分かれています。時には自転車を担ぎながら行うこともあります。競技は、地図とコンパス、SIカードを使って行います。コントロールポストを通過したときにSIカードを見て確認します。
聞こえない選手への配慮としてスタートランプというものがあります。10秒前に赤いランプ、5秒前に黄色、青がスタートとなります。スタートしたら初めて地図を読み、ルートを考え、コントロールポストに向かいます。体力だけでなく、技術も大切なスポーツです。開催日が近づいてきて、選手たちは調整を進めています。ぜひ応援いただけたら嬉しいです。
会の最後には、全員で手話を使ったジェスチャーゲームを行いました。発声は禁止、手話の使用も禁止というルールで、デフリンピックで行われる競技を題材に楽しみながらジェスチャーを伝えあいました。
当日は楽しく学べる雰囲気の中、「拍手」などみんなでできる手話はみんなで行い、一体感が生まれたように感じました。教えてくださった皆さんありがとうございました!
インクルーシブ研究会の過去のバックナンバーはこちらからお読みいただけます。
vol1「車椅子等、障がいがある方とのコミュニケーションの取り方」
https://machida-support.or.jp/report/performance/inclusivevol1/
vol2 「視覚障害の方の日常を体験しよう!」
https://machida-support.or.jp/report/performance/inclusivevol2/
vol3「子どもが安心できて心地よく過ごせる場づくりのヒント」
https://machida-support.or.jp/report/performance/inclusivevol3/
vol4「障がいと共に地域で自立して暮らす」
https://machida-support.or.jp/report/openday202410vol04/
vol5「まちカフェ!インクルーシブ研究会vol5「性の多様性を知り、みんなで仲間になろう!」
https://machida-support.or.jp/report/202411_vol5/
vol6「多文化共生~町田に住む外国ルーツの方とお話しましょう!~」
https://machida-support.or.jp/report/20250604vol6/
vol7「障がいと共に働く」
https://machida-support.or.jp/report/performance/20250703vol7/
