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実施報告performance

実施報告 2023年09月22日

【実施報告】まちだづくりサロン特別編「調べるちから、伝えるちからを身につける ~「薄書(はくしょ)」でもいいから、「白書」を作ろう!~」

9月9日(土)、ぽっぽ町田の会議室にて、まちだづくりサロン特別編「調べるちから、伝えるちからを身につける~「薄書(はくしょ)」でもいいから、「白書」を作ろう!~」を開催しました。当日は全国各地で地域づくりの講師を務められている、IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人の川北秀人氏にご講演いただきました。

 

講師の川北秀人氏

 

今回のテーマは、「薄書(はくしょ)」でもいいから、「白書」*を作ろう!」。市民活動団体が現場で出会う地域の課題や魅力、そして資源は、現場で活動する団体だからこそ把握できる情報です。それらを視野を拡げて集め、掘り下げ、まとめて伝えることで、その分野について知らない人にも、現状や今後を理解してもらい、行動に移してもらうことにつながります。だからこそ地域活動団体は、薄くてもいいから、「白書」を世に出していく必要があるのです。

*白書とは一般的には政府の各省庁が、政活動の現状や対策・展望などをまとめて伝えるための報告書。本講演会では、取り組む課題の現状や今後の見通し、事例や対策などを調査してまとめた報告書全般をさしています。

 

後方から撮影した会場の様子

 

本レポートでは、講演会でのお話と質疑応答の一部をご紹介いたします。
講演会では、白書についてのお話のほか、白書を作成するためのミニワークや白書を作った団体の事例紹介、町田市の現状なども交えながら説得力のあるお話をしていただきました。

 


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あなたは「社会を変えたい」のか、
「社会に良さそうなことをしたい」だけなのか?
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市民活動をしている方に問いかけたい質問があります。

「あなたは『社会を変えたい』のか、『社会に良さそうなことをしたい』だけなのか?」ということです。

「社会に良さそうなことをしたい」のなら、飽きたらやめるのもアリです。自分たちが楽しむための活動をするのも、社会を変えるために活動をするのも、どちらが良いという優劣のあるものでありません。

さて、みなさんが「社会を変えたい」のだとします。その方に質問したいことは「私たちを待つ人は、どこに、どれだけいるか?」、そして「その人々にいつ、どのように届けるか?」、さらに「私たちはそれを毎朝確認したうえで、今日の活動を始め、終えているか?」ということです。

では、大先輩はどうしていたのか。「フローレンス・ナイチンゲール」とWikipediaで検索してみてください。彼女は、看護師であると同時に、社会起業家、統計学者でもあると紹介されています。自分たちの取り組みの必要性と有効性を、データで説明し、しくみづくりに結び付けた人です。

市民活動は、<自分たちがしたいこと>だけをするのではなく、その活動がどういう状況の中で行われていて、次にどういうことをする必要があるのか、あるいは誰に支援を求めるとよいのかなどを明らかにする必要があります。周囲の人や組織の力も借りて、てこの原理で社会を動かすなら、「薄書」でいいから、白書を出す!ことが重要です。

 

<白書の事例>

・人権NGO アムネスティ・インターナショナル
→アムネスティは「世界人権白書」を発行し、「死刑をやっている国は」、「ジャーナリストが逮捕されている数は」などを報告し、重点を置く活動を決めています。

一般社団法人JEAN
→海岸清掃などを通じて環境保全に取り組み続けている団体。世界共通の項目で調査を行うことで、どの海岸・川のどのスポットで、どんなごみが増えてきたなどの特徴がわかると、対策も呼び掛けやすい。

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NPOは「1歩先の視野・半歩先のプログラム」
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被災地のお手伝いに行ったときに、言ってはいけないことがいくつかあります。その1つが、「お困りごとはありませんか?」です。被災された方の多くは「大丈夫です」と言うでしょう。困っていても、何に困っているかすら、明日どうなるのか、わかっていません。ほとんどの被災者は、初めての被災者です。だからこそ、被災地・被災者支援をする団体は、自分たちの経験を活かして「これに困っていませんか?」、「これが足りていないのでは?」と聞くのが筋です。

 

活動・事業系のNPOは、「1歩先の視野を持って半歩先のプログラムを提供する」。つまり、困っている方やこれから困るかもしれない人に、「あなたにはこういう選択肢があります」、「こうするともっとうまくいきますよ」という手段をお伝えするのが使命です。

 

活動の対象者は、ご自身の未来を正確に、あるいは詳細に理解していらっしゃるとは限りません。子育てでいえば、初めての子どもができたら、いっぱいいっぱいでわかりません。であれば、現在1歳の子どもを持つ親に聞いてみましょう。「お子さんが生まれた直後、どういうサポートがあるとよかったですか?」、「どんな支援がありがたいと感じましたか?」などと。

このように、先輩が困っていたことを聞きまとめることで、白書を出し、後輩たちへの貴重なヒントにすることができます。

 

その事例の1つが認定NPO法人マドレボニータが発行している「産後白書」です。お子さんを生んだばかりのお母さん600人に、産後の体の状態や夫婦の関係などについて聞いています。発行当時、テレビや新聞、ウェブニュースなどあらゆるメディアに紹介されました。この白書のおかげで、行政がこういう支援が必要なのだと気づくことができましたし、企業からうちの従業員向けにプログラムを提供してほしいという話も出てきました。

 

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ニーズをどう「しらべる」か?
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しらべる」というのは「かぞえる」、「くらべる」、「たずねる」、「さがす」の4つでなりたっています。(詳細:ソシオ・マネジメントvol.1「社会に挑む5つの原則、組織を育てる12のチカラ」

しらべる
 =かぞえる
 +くらべる
 +たずねる
 +さがす

私がアメリカのNPOを訪問してインタビューする機会を与えていただいた際、小さいけれどもとても信頼されている団体にヒアリングしたときのことです。「どうやって調査の能力を身に着けたのですか?どうやって調査のプロと出会ったのですか?」と尋ねたところ、「うちには統計や分析のプロはいません。しらべるってことを君は難しく考え過ぎているのではありませんか?しらべるとは、かぞえる+くらべる+たずねるということです。」と言われ、椅子から転げ落ちた思い出があります。

町内会を例に挙げると、まず「うちの町内会には何世帯が住んでいるか」、「近隣の自治会と比べるとこどもや高齢者の比率は?」など、「かぞえる・くらべる」ことが基本です。そして、住民に重要なことや困りごと、できることなどを「たずねる」、そして「よそにはどな事例があるんだろう」と「さがす」のです。

これらを白書という形でまとめられるといいのですが、それが難しいときには、毎年発行される年間事業報告書に、4ページでいいので特集を設けましょう。このように、薄い書でいいので、白書を出しましょう。

 

白書の概要作成ワーク。作成後隣同士で意見交換を実施。

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ミニワーク「〇〇白書」をデザインしよう!
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ワークでは、各自でA3用紙に以下4つの項目を記載しました。参加者からは、「実際に項目に沿って考えると難しい」、「白書を作成していきたい気持ちになった」という声が上がっていました。

タイトル:〇〇白書

最も読んでほしい対象者:
1)県内企業の〇〇担当者
2)県・市町村の〇〇担当者
3)県内の〇〇活動者
4)小中学校 〇〇担当教員
5)〇〇に関心ある学生  など

最重要読者に伝えたい項目:

1)今後求められる課題
 他県企業の水準(統計)
 他県企業の事例
2)県内市町村の水準・課題
3)現場活動者の問題点

第1章:状況の概観
特徴(比較)、状況の推移
どんなデータで?
第2章:特集今後数年間の重点課題?
どんなデータで?
第3章: 主な問題、原因・背景
重点課題の原因・背景?第4章:事例
工夫のポイントも明記!第5章:見通しと対策案
原因&段階別に
(この場合、短期に・・、中期に・)

 


<質疑応答>

Q1.福祉白書を作りたいと思っています。障がい者のことを市民全員に知ってもらいたいと思っています。こういうことを調べるためにはまずどうしたらいいのでしょうか?

A1.今日お伝えしたデータのほとんどは「国勢調査」からの引用です。行政はたくさんの調査を実施しているので、ぜひウェブで検索してみてください。また、社会福祉協議会が作成する「地域福祉活動計画」に、地域の福祉課題に関する調査結果が掲載されていることもあります。また、障がい種別によっては、他の組織と一緒に調査する方法もあると思います。

障がいとは異なりますが、LGBTQの方の当事者団体では、世代ごとの悩みごとや「あのとき、こういうことをしておいてよかった」といったことを、簡単な資料としてまとめた団体もあります。10代には10代の、30代には30代の、70代には70代なりの悩みがあります。このため、先輩たちが、こんなことで苦労した、それをこんな工夫で解決したということを、後輩たちに役立つようまとめたのです。

他にも、Ⅰ型糖尿病(生活習慣や肥満などではなく、自己免疫による糖尿病)の患者・保護者の団体が、年次報告書の中に調査をを織り込んで発行した事例もあります。Ⅰ型糖尿病の子を持つ保護者にとって、最も心配なことの一つが、就職の際に不利に扱われることはないか、という問題です。そこで、企業の人事担当者に、選考段階でⅠ型糖尿病と分かったときに、不合格とするなど不利な扱いをする可能性があるかを聞いた質問では、すべてが「NO」と答えました。

 

Q2.講演を聞いてぜひ白書を作ってみたいと思いました。ただ、私も非常にモチベーションに波がありまして、明日実施するイベントもこれから告知する予定です(笑)。趣味で楽しく活動をしている部分もあるのでゆるさも大切にしていますが、どういう風にモチベーションを維持できるといいか伺いたいです。

 

A2.人によってモチベーションの源泉は違うと思いますが、一つの事例としてボランティアについてお話します。ボランティアに続けてもらうためになにが大切かというと、「お礼の言い方」です。継続率の高い団体はお礼の言い方がうまいんです。日当など待遇を改善するより、感謝に工夫する方が有効です。

例えば、ガールスカウトのある県の支部では、その県の支部設立記念日に、現場で活動するリーダーたちが、職場の上司・同僚や家族など、一番お世話になっている男性を招くようにしています。その日は、活動を紹介しつつ、会を代表して支部長がお礼を伝えます。ボランティアは、その人が誰かと一緒にいるであろう時間を割いて参加していただいているものであるからこそ、そのことへの感謝を、スタッフではなく、理事がおこなう必要性があります。

 

Q3.小さな活動で少人数でやっていると、白書を出す体力がなかなか持てないと思うのですが、小さな団体でも出す意味をもう一度教えてください。

A3.白書出す目的は、その課題や活動を、いろんな人に、自分ごととして感じてもらうためです。

宮城県白石市の斎川地区は人口約900人位、高齢化率47%です。そこでは、中学生以上を対象とする全住民調査を実施し、世代別に集計して、中学生など29歳以下の世代限定の報告会を開くと、「何か地域のために手伝いたい」、「自分もできることをやりたい」と言ってくれたそうです。

結果として、地域の情報をまず若者主導で共有するために「LINEグループ作っちゃえ!」と盛り上がり、若い世代が活動に参加しやすくなりました。そのことが基盤となり、高齢者にもLINEの使い方を伝えて、防災にも活用しようという動きも生まれました。

続いて、30歳代から40歳代の会議も行われ、地域の活動量が多すぎて、すべてに参加したりすべての作業をこなすことが難しいと感じていることがわかりました。そこで、地域の様々団体の活動や役割を一覧にまとめ、一緒にできるものは「重ね」、頻度を下げることができるものは「間引く」という見直しを行いました。

これらの動きを可能にしたのは、調査を行ったからです。若者世代がどう考え、どうすれば地域に参加してもらえるかを、調査で明らかにしたのです。

 

Q4.手軽にできる手作り感のある調査方法があれば教えてください!

A4. 手作りは、うまくいくパターンと、手作りすぎて特殊事例になってしまうパターンがあります。手作り感のある調査については、参加しやすいという良さはありますが、信頼されにくいという点からは良し悪しかなと思っています。

 

Q5.調査の項目を作ったときは、川北先生に見ていただくことはできますか?

A5.時間次第ですが、直接だと僕は手加減せず鋭く指導するので傷ついてしまうと思います(笑)。地域活動サポートオフィスのように、やさしくケアしてくれる中間支援組織の方に、まず相談していただくのが良いと思います!


講演後、川北さんが参考資料として会場に持ってきてくださったたくさんの白書を見ながら、「私たちも作ろうよ!」などの話が盛り上がり温かい場になりました。

当日川北講師が展示された各地のNPO市民活動団体が作成した白書の一例

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