【実施報告】みんなの経験共有会vol.3~学生と一緒に活動してみた! 「学生との協働事業に取り組んだ経験共有会」
6月22日(水)和光大学ポプリホール鶴川多目的室にて、みんなの経験共有会vol.3「学生と一緒に活動してみた! 「学生との協働事業に取り組んだ経験共有会」を開催しました。サポートオフィスでは2022年4月より月1回、多彩なゲストをお招きし、一人ひとりの経験や挑戦を市民の知にしていく場「みんなの経験共有会」を開催しています。
今回は学生との協働の経験を学生、地域団体、行政の3者の視点でお話しいただきました。進行はサポートオフィス橋本が務めました。
参加者からは、
・これから定年を迎える自分自身のテーマとして、社会と、地域と、そして若い世代と、どのよう関わっていくかを考えながら拝聴いたしました。
・異種格闘技戦のような不思議な楽しさがありました。とても勉強になりました。
・最初はお互いに遠慮がある、ということが興味深かったです。遠慮しながらもお互いに歩み寄っていい関係が築けているのが素敵だと思いました。
などのご感想をいただきました。
「学生と一緒に活動してみた!」でのポイントまとめ
1.「若い力」「学生」とひとくくりにはできない。一人ひとり違うということを意識して |
以下、当日のトークセッションをレポートします。
<ゲストご紹介>
◆ 鎌倉古道・歴史遺産の会 東野至氏
◆ 法政大学3年 矢野聖悟氏 (法政大学多摩ボランティアセンター)
◆ 町田市職員 小山怜子氏 (町田市生涯学習センター主催事業 学生活動報告会「ガクマチEXPO」前担当者)
はじめに<自己紹介>
小山さん:
町田市役所元町田市生涯学習センター職員です。実は、4月から環境政策課に異動になりました。今日は、生涯学習センターの仕事として来ています。生涯学習センターで学生と連携した事業である「学生活動報告会ガクマチEXPO」を7年間も担当していました。ガクマチEXPOとは、町田市や近隣で活動している学生が地域で活動を発表する場です。
少し私自身のことも話しますと、私は女子美術大学でデザインの勉強をしていました。その後進学情報誌のデザインの仕事をして20代後半で市役所に転職しました。大学時代は、よくコンペに出展していました。自分自身は、作品を認められたいという承認欲求で活動をしていたのですが、生涯学習センターで地域のためにという思いをもって活動している学生さんとたくさん出会って、本当に感化されました。
東野さん:
鎌倉古道・歴史遺産の会の東野至です。71歳です。60歳で定年退職をして、家でぶらぶらしていましたら、「広報まちだ」に鎌倉古道歴史遺産の会が発足すると載っていたのを見ました。それで参加して11年続けています。
町田は、鎌倉古道がたくさん残っているのですが、それがあまり知られていない。歴史遺産として登録して、まちづくりにもつなげられたらいいなと思って活動をしています。鎌倉古道は町田市の大きな財産になるのではないかと思っています。
「まちカフェ!」には、もう11年参加しているんですが、昨年学生おうえん隊(*1)の募集を聞いて早速手を挙げました。8月のオンライン会議で活動をスタートし、10月に古道のミニウォークを学生と会のメンバーで一緒に歩きました。その他に古道整備の活動の時にも参加してもらって一緒に柿もぎをしました。その他には、古道ニュースという刊行物に学生さんにコメントを書いてもらいました。これはとてもよかったです。「まちカフェ!」では、「まちカフェ!協賛古道ウォーク」というイベントを実施して、学生にも参加してもらいました。他の地域の参加者から「町田は若い人がいていいね」とうらやましがられました。
ただ、私としては、昨年は50点。ああすればよかった、こうすればよかったという反省点もあるので、今日は、「こんな風にうまくできませんでした」という発表になります。
*1学生おうえん隊(https://machida-support.or.jp/news/machicafeintern2022/)
町田市市民協働フェスティバル「まちカフェ!」で2020年度に立ち上がったプロジェクトです。NPOや市民活動団体に入って活動してみたいという学生と、学生と一緒に活動してみたいというまちカフェ!参加団体をマッチングする取り組みです。
矢野さん:
法政大学現代福祉学部3年の矢野です。「学生活動報告会ガクマチEXPO」にも参加しています。昨年は、鎌倉古道・歴史遺産の会の学生おうえん隊にも参加しました。自分自身がもともと歴史に興味があったので、鎌倉古道・歴史遺産の会に参加させていただきました。普段は、法政大学多摩ボランティアセンターに所属しています。
Q1.学生との協働に取り組んで良かったことはどんなことですか?
小山さん:
若い方が町田市の事業に参画してくれる機会がとても少ない中で、学生さんに生涯学習センターやその事業を知ってもらい、参加してくれたというのがまずは良かったことです。活動を通じて「町田市って良いところだね」と思ってもらえたとしたらそれも良かったことです。さらにいうと、「卒業しても住みたい」と言ってもらえると嬉しいなと市の職員としては思っています。
その他に組織的なことでいうと、生涯学習センターにはやる気のある若者が集まっているということが市役所の中でも周知され、他課の職員から相談されるようになったことも良かったことだと思います。
東野さん:
私たちの活動に違う空気感が生まれました。若い方がいるというだけで、空気感が違う。我々の団体は、年寄りばかりなんですね。やっぱり一年ずつ年をとっていくし、組織を存続するために若返らなくちゃいけない。会の運営委員長である宮田太郎さんが「とにかく若い人に古道を知ってもらいたい」といつも言っている。リタイアした人もいいのですが、若いころから古道に親しんで、「町田といえば古道」と思ってもらえるといいなと思います。
矢野さん:
一番大きかったのが授業では学べないことをフィールドで学べたことです。僕が入学した年にコロナ下になってしまって、外に出て学びに行く機会が全くなかったので、行政や地域の活動を自分の目で見ることができたのが大きかったと思っています。
Q2.学生と活動(学生は、地域や行政と活動)して大変だったこと、難しかったこととそこからの学びについて教えてください。
小山さん:
大変でもあり辛かったのが、「なんで市役所でそれができないんですか」と言われたことです。コロナ禍になってから、生涯学習センターも休館になりなかなか活動ができなかった中、学生さんが集まって「自主的に何か替わりのイベントをできないか」とオンラインイベントの方法を調べて企画してくれました。
でもなかなか行政のシステムやセキュリティの関係で対応できないこともあり、学生さんから「地域ではいろいろなイベントをオンラインでやっているのに市役所ではできないんですか」と言われてしまいました。その言葉で私もなんとか思いに応えたいと思い、いろいろ調べて、できる形を検討して調整しました。結果としてその年はオンラインを使ったミニイベントという形で実施することができました。
公的な事業なので、様々な調整が必要ですが、学生さんのおかげで自分も成長させていただきました。学生さんが自分の可能性を伸ばしてくれたと思っています。
東野さん:
私としては、学生さんの発信力に期待していた。ただ、こちらの指示がはっきりしていなかったので、お互い消化不良だったかなと思っています。こちらからのストロークが弱かった。お願いの仕方が不十分だったかな。ただ、学生さんと一緒にいると高揚感も違うし、そこがすごく良かったなと思っています。今年の1月に講演会を開催したんですが、そこでも学生さんが受付をしてもらったんですが、参加者が、それを見て「学生さんも興味あるんだ」と言ってて、新しい刺激になりました。
矢野さん:
難しかったこととしては、「若い力を借りたい」と何度も言っていただいたのですが、若い力ってなんだろうとわからずじまいになってしまいました。答えがなかなか見つからなくて、なあなあで進んでしまったところがあります。どちらの活動も年月をかけて活動しているので、歴史や重みを理解するのに時間がかかってしまったということもあると思います。まだ乗り越えられたと実感できていないのですが、今年も学生おうえん隊に応募していますし、ガクマチにも参加するつもりなので今年は乗り越えていきたいと思っています。今年は2年目なので、少し自分から提案もできたらいいなと思っています。
橋本:
ちなみに、一緒に活動してみてお互い一番びっくりしたことは何ですか?
東野さん:
いまの学生さんは真面目なんだということを再認識しました。私なんかは、学校は顔を出して雀荘に行くか、飲みに行くかでしたけど(笑)
矢野さん:
今、まじめといわれて背筋がピンとしました(笑)。もしかしたら僕らが真面目すぎて柔軟な対応があまりできなかったかなと反省しています。
Q3 年齢や立場が違う中で、活動する時に特に意識していたことはありますか?
矢野さん:
歴史を壊さないように、次につなげていけるようにということを意識していました。年代が違うということは最初から知っていたことなのであまり気にしていなかったです。団体さんや事業の担当者の方が大切にしてきた価値観を次につなげようと思っていました。
小山さん:
学生さんは「大人の方、大人の方」と言ってくださるのですがあまりそう思っていなくて「同じ目的に向かう仲間」だと思っていました。できる限り学生さんの意見は取り入れたいし、通してあげたいと思っていました。また、「大人」からやらされている感を感じると学生さんの気持ちは離れていくと感じていました。そういった部分に学生さんは敏感なので、なんとか思いに応えられるように考えながらやっていました。
あとは、学生さんも一人ひとり違うのでそれを大事にしたいと思っていました。毎回参加していて、何も話さない学生さんもいましたが、そういった学生さんも参加してくれているということはイベントを大切に思ってくれているということだと思うので、話しやすいように名前を呼んだり、ちょっと話をふってみたりとか意識していました。
東野さん:
若い人の意見や考え方を知りたいという素朴な要望があるんですね。意識していたというより反省していることですが、普段の雑談が少なかったことで見えない壁を感じましたね。お見合い状態が続いちゃいました。あとは、ここをやってくれない?とかもうちょっと具体的な依頼のしかたをしたらよかったかなと思います。
橋本:
お見合い状態じゃなくなったのはいつでしたか?
東野さん:
打ち解けたのは、最終日の飲み会です。時すでに遅しなのですが。会議の場だと普段着ではないというのはあったのかな。
矢野さん:
僕も同意見です。活動している中で関わるだけだと身構えてしまうところがあったのかな。鎌倉古道の東野さんではない、普段着の東野さんが飲み会で見れました。
橋本:
では、もし時間が戻せるならどこで普段着になれたらよかったと思いますか?
東野さん:
柿もぎに来てくれたんですけど、そのあと、ご飯食べませんかって言えばよかったと今となっては思いますね。
矢野さん:
僕も同意見です。あの日は残ればよかったかな。ああいう体験ができる一日はこの先もなかなかないと思うんです。僕らも悪かったです。
橋本:
恋人の関係みたいですね(笑)行政の方は普段着になりにくいことも多いと思いますが、小山さんはどうですか?
小山さん:
学生さんはぶつかってきてくれるので、「市役所の人」としてではなくて、自分のできる対応でぶつかるしかない。一緒になってぶつかっていくしかないと。
Q4 活動を通してお互いに印象の変化はありますか?
矢野さん:
町田市でこんなに多くの市民活動があるんだ、行政の人がこんなに支えてくれるんだと思いました。鎌倉古道さんですと、皆さんが孫のように接してくれました。最初の印象は、堅い人たちなのかと思っていたんですがみなさん本当に温かくて、応援してもらえて、充実した毎日でした。
東野さん:
町田って学生の町っていわれるんですね。頭でわかっていてもそんなに感じていなかったんですが、漠然としていたのが、学生と接したことで学生さんが町田にいるなと身近に実感することができました。
小山さん:
学生さんは火がつくまで時間がかかるのですが、爆発してから最後の1週間の伸びがこんなにすごいのかということは毎年感じていました。私も、部活の顧問の先生みたいな気持ちで必死についていってました。
橋本:
ギリギリになってしまうと、事業の担当者としては心配じゃなかったですか?
小山さん:
最後は「間に合わないよ」とか「なんとかやろうね」とか「参加しない子がいたらみんなで誘おうよ」とか、結構言いましたね。
<会場から質疑応答>
参加者①:
法政大学4年生です。こういう地域活動に参加するにあたって、難しそうだな、初対面の大人ばかりで怖いなとか、自分は役に立てるかなと思ってしまう子も多いと思うのですが、そのハードルを下げる工夫は何かしていることがありますか?
小山さん:
自分から、学生さんに近づいていくようにしていました。「こういうことをやるから参加してください」ではなくて「なにか一緒にやりましょう」という姿勢です。「ここに来たら楽しいことができる」と思ってもらえればと思っていました。あとは、「誰かやりませんか」と言ったときにシーンとしていても、個別に後で声をかけたりすると実はやりかったという学生さんが多いので、それも意識した点です。学生さん一人ひとり火がつくタイミングは違うので、ちょっとでもやりたそうな兆しが見えたら、あとで声をかけたりしました。あとは、「一緒にやりましょう」と誘ったからには、最後まで一緒にやるという気持ちは持っていました。
東野さん:
私たちは誰でもウェルカム。意識しているということではないですが、わからなかったらはっきり言ってくれると助かるなと思います。弱点や弱みを言ってくれるとうれしい。
矢野さん:
自分が得た経験を通してこういうメリットがあるんだよと伝えます。あとは、町田市にはこういう活動している人がいるんだよということをまずは伝えることです。人それぞれペースがあるのであまり無理しなくても、まずは活動を知ることが大切かなと思っています。それと横からサポートする雰囲気づくりも大事かな。
参加者②:
私も別の市で学生さんのボランティアと地域の団体をつなぐ仕事をしています。大人の立場からすると学生さんに無償でやってもらっているので、どこまで言っていいのかなという遠慮の気持ちを持ってしまって、「協働」が難しいのかなと感じたのですが。
東野さん:
私自身は、遠慮はなかったんですが、なじむまでに時間がかかった。目標とか締め切りがはっきりしてないと、ついずるずるしちゃうというのがあったような気がします。
矢野さん:
こういう活動に参加できて、学校外で活動できたというだけで、得るものがあったので、無償でとかお金のことはあまり考えていなかったです。会の目標を達成するのには僕が力不足だったかな。何とか力になりたいと考えていたので、それが心残りではあります。
経験共有会では、最後にゲストの方からメッセージを掲げていただき、クロージングとしています。今回のお聞きしたのは「あなたにとって学生(学生は地域)との協働とは?」です。3人に書いていただいたものを以下に紹介いたします。
小山さん:「仲間づくり」
大人と学生ではなくて「同じ目的に向かう仲間」ですから、こちらもぶつかっていくしかない。仲間を増やしていくというイメージです。こういう事業が何年も続くとOBも参加してくれるようになりました。それが市の職員として財産になったと思っています。
東野さん:「共動共学&雑談」
ともに動いて、ともに学ぶ、蛇足で付け加えると雑談。雑談がないと人間は知恵が浮かばない。会議以外のインフォーマルな活動が大事です。
最後に一つ、サポートオフィス通信26号に「まちカフェ!発プロジェクトに学ぶ 学生の力を地域活動団体に活かすポイント」という特集。ここにヒントが書いてあります。これおすすめです、僕のバイブル(笑)
矢野さん:「経験」
僕だけ、自己中心的な一言になってしまったんですけど、こういう活動を通して得られた経験が一生の財産。就活とかにも活かせる活動になったと思います。自分のことばかりで恥ずかしいんですが…。
橋本:
一緒に動く、一緒に経験する、一緒に学び合うことが大切だということがお三方のお話から伝わってきました。そういう姿勢があるからこそ上手くいかないことがあってもお互い信頼しあえるのだと思います。本日はありがとうございました。
今後もさまざまなテーマで開催してまいりますので、ぜひご参加いただければと思います。
次回は、7月25日(月)14:00-15:30に【オンラインイベントやってみた! 「オンラインイベントのコツ経験共有会」】を開催いたします。今回は、オンラインとのハイブリッド開催。オンラインイベント、ハイブリッドイベントを体感していただけます。オンラインイベントの開催未経験の方も、開催経験がある方でグレードアップしたい方もお楽しみいただける内容です。
詳細・お申込みについてはこちらのページからご覧ください。
過去開催回の実施報告は、下記ページからご覧ください。
▼みんなの経験共有会vol.1~法人を設立してみた「NPO法人・一般社団法人設立経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon04/
▼みんなの経験共有会vol.2 ~協働事業やってみた!「協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon05/