【コラム】元行政マン、現役NPO代表&中間支援組織スタッフの小話 vol1「医療従事者へのエール」
元行政マン、現役NPO代表&中間支援組織スタッフの大谷が、行政とNPO・市民活動それぞれが持つ「習性」により醸し出されるちょっとした行き違いや、いま一つ埋まらないお互いの距離などについて、私の経験の中で感じたことをエピソードを交えてお伝えし、皆様の日頃の活動のヒントにでもなればと思い書いてみることにしました。
これは、私個人の経験から発する感想のようなものですので、科学的な正確さや緻密さに裏付けられたものではありませんので、その辺をご承知おきいただき、お気楽にお楽しみください。
いま、新型コロナウイルスの感染で世界中、日本中が社会の歩みを止めて対応を迫られています。感染に対して治療の最前線で戦っている(従事している)「医療従事者」たちがいます。私はかつて町田市民病院に勤務し、業務として病院の病棟の立て替え工事を進める病院建設室というところにいたことがありました。病院には、医師、看護師、放射線技師、検査技師、薬剤師、医療事務、管理事務などの職種の人々がいます。医師を中心として、それぞれ役割分担の中で連携し、「患者さん」への対応(治療)をして、再び社会に戻ってもらう、という営みを続けています。医療現場は365日、24時間対応を迫られているのです。
ただの行政職一般事務の私が「医療従事者」たちとの違いをいちばん感じたのは、職務遂行への使命感の強さでした。通常、医師(ドクター)たちが、一般外来の診察を終えるのが午後2時過ぎ、食事は売店のサンドイッチやカップ麺などを急いで摂り、今度は入院病棟の患者の診察に向かいます、毎日です。看護師たちは、患者に直接触れ、採決や血圧測定をしながら患者の容態観察をし、記録してドクターに知らせます。放射線技師、検査技師は、診察に基づくドクターの指示のもと、必要なデータを収集し、結果を通知します。薬剤師は、診察の結果の指示のもと、薬剤調合をし、患者さんに渡していきます。
こうした流れ作業により、病状の回復を促進し、患者さんを社会に返していきます。
看護方法や各医療技術分野は日進月歩、常に新しい開発が進められ、それを習得しながらの日々の業務従事となっています。私が病棟建設を進めているときに、同時進行で医療事務のコンピュータ化を進めることになりました。すべての職種から総スカンを食らい、とりわけドクターたちから「無理だ」という意見が強く出されました。この道何十年のベテラン医師たちが、患者を診ながらカルテに病状と治療方法とを書き込んできた、その出来上がった方法の世界の中に、端末機とキーボードが入っていくわけですから、「無理だ」も当然です。
入力作業を単純化し、画面遷移も経験を尊重した流れにして、慣れさえすれば、いままでより早くて便利、と思えるように気を使いましたが、コンピュータ化を進める最後の決断は、「ドクター」たちの医療への使命感だったように思います。
看護師や各医療技術師たちも医療体制の進歩に向けて、日常の忙しさの上に、電子カルテシステムの研修を受けてくれました。動きが一つにまとまれば、もともとチームワークの強い世界ですから、一気に進みました。こうした病院内の現象は、20年くらい前に日本中の医療現場に生じた変革の嵐でした。
いま、「医療技術者」たちは、新たな、治療薬のないウイルスの蔓延に対して、鍛え上げたチームワークを以て果敢に立ち向かっていることと思います。
がんばれ、医療従事者たち!
著者/大谷 光雄
町田生まれ町田育ち町田市在住。1977年町田市役所に入職、最後の10年を新たな地域社会づくりの核としての地区協議会の設立に従事。その傍らで会員制のNPO法人町田演劇鑑賞会を設立、会長として35年目を迎える。平成18年より地元町内会副会長を歴任。