【実施報告】みんなの経験共有会vol.5~助成金にチャレンジしてみた!「助成金の活用経験共有会」
9月27日(火)、町田市生涯学習センターのホールで、みんなの経験共有会vol.5~助成金にチャレンジしてみた!「助成金の活用経験共有会」を開催し、14名の方にご参加いただきました。
今回は助成金を活用した経験をNPO法人ゆどうふの三井泰平さん、こどものまち「ミニまちだ」の熊切勝夫さんにお話しいただきました。また、助成側の視点から公益財団法人トヨタ財団(国内助成グループプログラムオフィサー)の武藤良太さん、行政側の視点から町田市生涯学習センター職員の菊島登志子さんにお話しいただきました。進行はサポートオフィス喜田が務めました。
今回のテーマは「助成金」。助成金は比較的規模の大きな金額を獲得できる一方で、期間や使途が決まっており、使い方によっては団体にとって良い影響も悪い影響もあります。今回のトークセッションでは、ノウハウ面だけでなく、助成金の本質(どうやったら活かせるか)にも迫りました。
「助成金にチャレンジしてみた!」でのポイントまとめ
1.団体と助成側は一緒に取り組む協働パートナー。 |
以下、ミニ講座とトークセッションをレポートします。
<自己紹介>
三井さん:
町田市の小山を拠点に、引きこもりやニート・障害・不登校経験者などの若者支援をしています。支援の柱として居場所を運営し、一緒に活動することで生きるエネルギーを少しずつチャージしていただいています。若者の一番の困難は「自分の所属がなくなること」なんです。中学までは義務教育ですが、それ以降引きこもってしまった場合、社会的行方不明状態になってしまうんですよね。そういう方にとって安心・安全で大事な場所になってほしいと思っています。
居場所を運営すると同時にその後社会に出ていくことを想定し、トヨタ財団の助成金を得て「わらしべワークプロジェクト」を立ち上げました。社会に出る前にまず小山町の中でゆるやかなつながりを作ることを目的として、ワンコインをいただきながら草むしりや機関紙の発送作業などの地域の小さなお仕事をを若者たちがお手伝いしています。
今日はこれからお話しをたくさんできればと思いますが、私は皆さんから見ると怒っているように見える時があるそうです(笑)。今日もしそんな表情でも、文句がある等ではないとご承知おき頂ければと思います(笑)
熊切さん:
こどものまち「ミニまちだ」実行委員会を立ち上げた者です。子どもたち自身で考える「子どもだけのまちづくり」を行っていて、社会のしくみを学ぶ経験をしていただいています。現在は、11月19日・20日に実施するイベント本番に向けて出店内容を考えたり、ミニまちだの市長を選挙で決めたりしています。
この活動は昨年9月に私が言い出したことでスタートしました。昨年10月から年末にかけて3つ立て続けに助成金に申請しました。ありがたいことに3つすべて採択していただき、条件を鑑みてその内2つを頂くことにしました。他にも、今年6月には町田市内の社会福祉法人が実施している助成事業にも応募し、無事採択されました。ちなみに現在クラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/103983)にも挑戦しています!
菊島さん:
生涯学習センターの事業「講座づくり★まちチャレ」の紹介をさせていただきます。まちチャレの目標は、市民の皆さんがお互いに学び合って市民活動を活発にしていただきたいということです。まずは講座を開催してみませんかとお誘いするような企画です。
市の事業なのでいろいろ申請などが難しいのでは?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、本事業の良いところは、講師予算が補助される、チラシ印刷や広報は市がやってくれる、開催場所(公共施設)は確保してくれる、などです。難しいところは、Zoomが使えない、事業実施の期間が決まっている、などです。
実施のためには3月末の説明会に参加していただき、申込書をもとに選考会を実施します。選考が通ったら講座計画書を出していただきます。その後職員といろいろ相談しながら9月~3月末の期間で連続講座が実施できます。
担当者からのお願いとしては、事業のチラシや説明書を事前によく読んでいただけると大変嬉しいです。そしてその中で「採用されやすいポイント」をぜひ探してください!各地区の市民センターで実施するなど、その地区特有の企画などは実はポイントがアップするんですよ。2023年度は3月18日(土)午前・午後に説明会を実施します。お話聞くだけでもいいので、ぜひご参加ください。
武藤さん:
トヨタ財団で国内助成プログラムを担当している者です。トヨタ財団は助成の担当として研究助成・国際助成・国内助成の3グループがあります。国内助成は、10年以上にわたって地域づくり・コミュニティづくりをテーマに助成を実施してきています。2021年度にテーマを見直した現行のプログラムでは、「誰かが何かをやってくれる」というよりは「市民1人1人が主体性を持って協力して進めていく」という視点を重視しています。今年度の募集は終了しましたが、次年度も来年4月頃募集を行う予定ですのでご関心ある方はご覧いただければと思います。
<トークセッション>
Q1.助成金というのは良いところ・難しいところの両面があると思います。皆さんが考えることをそれぞれの立場から教えてください。
三井さん:
まずは良いところについてです。皆さんも市民活動をされていく中で、活動のきっかけは社会に対する憤りや希望だと思いますが、それを助成金の申請書に個人的な言葉で書いても伝わらないんですよ。申請の際にそれらを広く一般化し、社会に通用する言葉に変える作業が必要になります。そのプロセスがとてもいい機会になりました。
もう1つはわらしべワークプロジェクトを立ち上げたことで、地域の他団体とネットワークを作り取り組んだ結果、高齢者の孤立・お子さんの引きこもりなどの相談も自団体に入ってくるようになり、二次的に地域課題の早期発見・早期対応につながっていきました。
難しいところというか悩みなのは、複数の助成金に同時に応募するとき、助成金によってプログラムの狙いが異なるのでそれぞれに合った文言へ変える必要があるところです。また、申請書を書く際には、本来「社会課題」ではないかもしれないことも「社会課題」だと表現しなくてはならない場合があり、矛盾を感じています。
「若者支援」は社会保障制度には該当せず、また、受益者である若者からはお金をいただきづらい分野です。助成金が終了したらこの事業をやめますよ、というわけにはいきません。助成金応募と同時に、事業をマネタイズしたり制度化に向けて提言したりしてお金を得られるようにするなどの準備も必要だと思います。
武藤さん:
助成金のよいところは、まずはまとまったお金を手に入れることができることだと思います。融資などは返す必要がありますが、助成金の場合は団体に託します。活動を行う側が主役であるということも、とても重要なポイントです。
その他には、自分たちが活動する地域の中だけでは仲間を見つけられない場合も、全国で見ると似たような取り組みにチャレンジしていたり、同じような悩みを持っていたりする団体もあり、ネットワークづくりにも寄与できるというのは全国規模でプログラムを実施している助成財団の強みでしょうか。
悪いところは、いろいろな制約があるところだと思っています。助成財団側のメッセージを理解すること抜きでは申請していただくことができません。また、申請をしてから決まるまでの期間が長いというのも悪いところの1つですね。応募いただく場合には、助成金を取れた場合・取れなかった場合で、いくつかのパターンを考慮した次年度の事業計画を立てる必要も生じてしまいます。
また、最近は、助成金を出す側も短期的な成果を求めるようになってしまっています。助成財団にも「評価」という話題の波が来ているので、その傾向はしばらく変わらないと思います。
熊切さん:
よいところは、やはり申請して通れば財源が確保できるということですね。活動を始めようと思ったとき、そろばんを弾くと100万円くらいかかることが分かったので、ダメ元でも出してみようと思いました。
また、助成金をいただけたことにより「自分たちがやろうとしていたことを評価してもらえた」、「背中を押してもらえた」という面がすごく大きかったです。
助成金をもらうと、チラシ等の広報物に助成財団のロゴを入れるなどの条件があることがあります。そのような条件も、うちのような初めて事業を開催する団体にとっては、第三者の方に「きちんとした活動だ」と信頼してもらえる1つの要素になると思っています。いい意味でこちらも利用させていただいています。
難しいところは、助成対象になる項目が決まっていて、無条件に全額もらえるわけではないという点です。「これにも使えないの?」と感じる場合も多くあります。あとは事務処理がすごく大変なところです。報告書を含めて提出する必要があるので、手間が増えてしまいます。
またうちの団体の場合、助成金がもらえるのは単年度だけということは忘れちゃいけないと思っています。今年はよくても来年・再来年のことは常に考える必要がありますね。
Q2.申請書を書く時のポイントや書くときの成功のヒケツがあれば教えてください。
熊切さん:
すべて初めての経験でしたが、書く内容がとても多いです。3つの助成金に応募しましたが、それぞれ書いている内容は少しずつ違います。助成財団が背中を押したがっているポイントはどこかな?と探しました。例えば「体験」を重視している財団には、体験プログラムだという点にクローズアップする、「地域」を重視している場合はその点をクローズアップするなど書くときに工夫しています。サポートオフィスにも何度も相談しました。
喜田:
サポートオフィスももちろんご相談は歓迎です。サポートオフィスでなくても申請書を第三者に読んでもらうのはすごく大事ですね。仲間以外ではっきり言ってくださる方に相談してみることをおすすめします。
三井さん:
助成金申請は、助成側と団体がどこまで折り合いをつけられるかというポイントを探す作業になると思います。初めて申請するときは、全然要項の意味が分からず助成財団の担当者に連絡を取りたかったのですが、連絡をすると「こいつ分かってないなー」と思われるかなと思って怖かったです(笑)。でも、今思うと、とにかく連絡は密に取り、疑問点はできるだけ解決して申請書を整えていった方がいいと思います。あとは当日ギリギリになると何かが起こります!昨年度は提出する日、ゆどうふのネット回線が落ちて焦りました…。余裕を持って準備することが大切ですね。
また、日頃からニュースや新聞などによくアンテナを張り、自分たちの活動とそれらがどう結びつくか考えるという癖をつけるといいと思います。例えば最近は「ケアリーバー」という言葉がよく取り上げられるようになりましたが、1~2年後には、ケアリーバーという言葉が入った助成や補助金などのメニューも増えるのかなと予想しています。
喜田:
助成財団は社会の変化に合わせてプログラムを作っているので、常にアンテナを張ることは必要ですね。また、最近は申請書のオンライン提出が増えています。基本中の基本ですが、提出には余裕を持つことが大切です。
それでは、助成を出す側の担当者側の意見もお願いします!
菊島さん:
まちチャレの事業は、どんな目的でどんなことがしたいのかという想いを話していただけると審査しやすいです。細かく決まっていなくても大丈夫です。ポイントは独自性や、新たな学びであるかどうかという点。いつも通りのサークルの活動内容でそのまま応募されると、選考が厳しくなります。
武藤さん:
外せないポイントはいろいろありますが、助成金プログラムは「何を対象にして、何を目的にしているか」ということが全て要項に書かれています。なので応募要件と応募趣旨は大切です。趣旨の合致については、グレーゾーンが多く、トヨタ財団の場合だと、事前相談や申請書の確認などを通じて事務局がスクリーニングしています。そういう意味では趣旨に一番詳しいのは事務局なので、気軽に相談してください。趣旨の合致度やお互いの落としどころを考えるご相談は、一緒にできればと思います。
喜田:
応募要件と応募趣旨を理解するということは当たり前のことのように聞こえますが、合致していない場合も多くあるのが現状です。遠慮なく何度でも相談してOKということ、心強いですね!
Q3.参加者の皆さんから事前にいただいた質問をご紹介します。皆さんどうやって該当する助成金があることを知ったのか、探したのかということを教えてください。
三井さん:
ネットでキーワード検索しました。「若者支援」「福祉」などです。他にもいろんな助成金が一覧で掲載されているポータルサイトを利用して探しました。定期的に調べることは大事ですね。同業者から裏情報をいただくこともあります。
喜田:
ポータルサイトは、CANPANや公益財団法人助成財団センターなどが有名で、助成金をキーワード等で検索できるようになっています。サポートオフィスに届いた助成金情報は、サポートオフィスのメルマガ等で案内しています。
武藤さん:
地域の社会福祉協議会や行政がまとめて発信しているケースもありますよ。
熊切さん:
私はネット検索もしましたが大きな財団の情報が多いので、地元でもらえる助成金を調べました。1つ見つけたのは町田市社会福祉協議会がやっている「歳末たすけあい地域福祉・ボランティア活動助成配分」です。社協に行くと、ラックに並んでいるチラシをすべて見るようにしています。今回もそこでたまたま知りました。
市内の某社会福祉法人が行っている助成金は、地区協議会の会合にお邪魔してミニまちだの話を紹介させていただいた時に、たまたまその法人の方がいらっしゃり直接声をかけていただきました。もしかしたら地元で出している助成金情報には、ひょんなことから出会える場合が多いのかなと思いました。
喜田:
ラックを見るのは大事ですね。また、日頃から短い時間でわかりやすく自分たちの活動の紹介ができるよう準備しておくことも大切なことですね。
Q4.こちらも事前にいただいた質問です。助成金応募にあたり、法人格を取っておく必要がありますか?任意団体でも応募できるものはありますか?
武藤さん:
法人格がないと応募できないプログラムが一定数あることは確かです。また、法人格があることによって社会的に認められ、信頼性が高まるメリットなども考えられます。法人格がないと契約は代表者の個人契約になってしまうので、法人格を取得することで事業や組織の運営におけるリスクヘッジにもなります。ただ、活動の基盤がまだない中、助成金取得のために法人格を取る!というのはあまりおすすめしていません。
Q5 文化芸術関連の助成プログラムは少ないと感じています。
武藤さん:
確かに、少ないです。ただ、文化芸術をまちづくりにどう活かすかという視点でまちづくりをテーマにした助成プログラムに応募するなど、視野を広げると応募できる助成プログラムも出てくると思います。実際、トヨタ財団でもアートの力を活用して地域づくりをすすめるといった応募もあります。
Q6.(会場からの質問)助成金を応募する際に、「他の助成金にも応募していますか?」という項目がたまにあります。どういう意図で聞かれているのか心配になるので、その項目で助成側が判断されていることを教えてください。
武藤さん:
純粋に確認したいから聞いているのだと思います。いくつかのねらいが考えれますが、例えば、そのプログラムで助成できる上限額が限られているため、プロジェクト全体の予算が助成金よりも大きい場合はその他の収益はどうやって確保する計画であるかを確認したい、また、同様の企画で他の助成金等に応募している場合で先に採択されたことが分かれば、その分の金額を他の応募案件に助成できる、といったことなどが挙げられます。
基本的な考え方として、申請書は選考で必要な情報を取得するためのフォーマットということです。ですので、申請書内の設問の意図が十分に読み取れない場合は担当者に確認してみることをお薦めします。
<クロージング「あなたにとって助成金とは?」>
経験共有会では、最後にゲストの方からメッセージを掲げていただき、クロージングとしています。今回の一言は、「あなたにとって助成金とは?」です。
三井さん:「向」
助成財団と向き合うということはもちろん、助成金を獲得するために受益者を手段化していないか、受益者のことを無視していないか、社会に発信していく言葉になっているか、などいろいろなことと向かい合う作業だなと思っています。
武藤さん:「協力3.0」
松原明さんが共著で出された『協力のテクノロジー』という本に書かれている言葉です。団体側、助成側の想いがどちらも完全に合致することはないと考えますが、それぞれがめざしている社会の実現に向けて協力3.0の考え方が大切だなと思っています。
*『協力のテクノロジー』についての講演会を9月10日(土)に実施しました。当日のレポート もあわせてぜひご覧ください*
熊切さん:「期待と責任」
助成金をいただけるということは、期待してもらえて嬉しい反面、責任を感じることでもあります。期待と責任、言葉は違いますが、どちらも活動を推し進める原動力になっています。
菊島さん:「一緒に楽しもう!!」
チャレンジしていただける方とご一緒できる機会が多くて、本当にいつも楽しいです。はちゃめちゃなこともありますが、どんな方とも最後にはやってよかったなと感じることが多いです。
喜田:
4人それぞれ言葉は違いますが、「一緒に」、「向き合う」という点で皆さん共通しているなと思いました。お金だけではなく、一緒にやっていくことが大切だよというメッセージを感じました。
次回は、10月25日(火)10:00~11:30、TENT成瀬にて「みんなの経験共有会vol.6 マルシェやってみた! 『マルシェ開催の経験共有会』」を開催します。開催スタイルや雰囲気がそれぞれ多様なマルシェの運営に携わる3人から、その魅力や成果について伺いたいと思います。
過去開催回の実施報告は、下記ページからご覧ください。
▼みんなの経験共有会vol.1~法人を設立してみた「NPO法人・一般社団法人設立経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon04/
▼みんなの経験共有会vol.2 ~協働事業やってみた!「協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon05/
▼みんなの経験共有会vol.3~学生と一緒に活動してみた! 「学生との協働事業に取り組んだ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/performance/salon06/
▼みんなの経験共有会vol.4~オンラインイベントやってみた! 「オンラインイベントのコツ経験共有会」
https://machida-support.or.jp/report/salon07/