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実施報告performance

実施報告 2025年09月08日

【実施報告】第2回まちだのコーディネーター研究会を開催しました

8月22日、第2回まちだのコーディネーター研究会を開催し、対面3名・オンライン10名の計13名の方々にご参加いただきました。

学校、福祉、地域、市民活動と様々な場面で名称に「コーディネーター」と付く職業や、職業としてではなくても地域活動の様々な場面で「コーディネーター」的な役割を担う方も多くいらっしゃいます。本研究会では毎回ゲストにまちだのコーディネーターに必要な「専門性」をインタビューし言語化すること、そしてコーディネーター同士の情報交換の場となることを目的として開催しています。

インタビュー項目は、6月に開催した第0回コーディネーター研究会の参加者の方々と共に考えた質問項目です。

今回のゲストは、下記のお二人でした。

<今回のゲスト>
・川合志織さん(三ツ目山冒険遊び場・子どもと遊びを中心に地域をつなぐコーディネーター)
・宮島徹さん(町田市学校支援センターゼネラルボランティアコーディネーター・学校と地域をつなぐボランティア同士をつなぐコーディネーター)

 

サポートオフィスの事務所から配信しました。左からサポートオフィス喜田、宮島さん、川合さん。


以下、詳細なインタビュー内容を公開します。


<インタビュー内容>
Q1.ご自身のコーディネートスタイルについて、「理論派・経験派・感覚派」の割合で表すと、どのようになりますか?

宮島さん:
3日間寝ないで考えたところ、私は「経験40%:理論30%:感覚30%」です。毎年同じことを繰り返すだけでは新たな発見は生まれない、何もしなければ楽しいことや学びのある失敗も起きないので、経験することが大切だと思い4割にしました。教員時代も子どもたちを大切にする一員として地域のいろいろな方と関わるために学校の外に意識を向けていることも多かったです。

川合さん:
私は「感覚70%:経験20%:理論10%」ですかね。遊びに来る子どもたちの「今日はちょっとおかしいな」、「危ないかな」といった空気感やざわめきなどの違和感に気づくのが重要だと思っているので、感覚と経験を頼りにしています。感覚が70%なのですが、この感覚の土台には普段から学んでいる子どもの発達や心理、環境や危機管理などがあります。
私は毎日常駐しているプレイリーダーですが、他のメンバーは入れ替わり立ち替わりするため、個人の感覚をうまく伝えるには、理論も学ぶ必要があると感じています。

Q2.コーディネーターの役割を後輩に伝えるとしたらどう伝えますか?

宮島さん:
この仕事をしていると、こんなに子どものことを考えている人や学んでいる人が沢山いるんだことを知り、すごいなと思う機会が沢山あります。学校は学校内で解決しようとする意識が強く、「共に」という意識が醸成されないんです。私は学校ボランティアコーディネーターの方々には、「子どもを中心に考えましょう」と伝え、地域の未来をデザインする楽しさや対等な立場で話し合うことの良さを感覚として味わってもらいたいと思っています。コーディネーターの役割は、つなぐこと、知らせること、それから広げることが大きな役割だと言われていますが、私はそれにプラスして「支える」ということが必要な要素だと思います。

川合さん:
「うまく整えなくてもいい」かなと思っています。うまくやろうとするよりは、子どもたちが「楽しかった」、お母さんたちが「安心した」という気持ちで帰っていけるのは、裏で見守っているあなたたちがいるからなんだよということを伝えたいです。出しゃばりすぎてもいけないし、つなげたい日もあるし、でもやっぱりだめな日もある。それぞれのスタイルでいていいんだと思います。反対に、ジャッジと乱暴だけはしてほしくないです。やってほしくないことも安心・安全に言えることが大切ですね。

Q3.これまでにコーディネートの過程で直面した困難や課題はどのようなものでしたか?また、それをどのように乗り越えましたか?

宮島さん:
困難だったのは、コロナ禍です。学校は協働活動やコミュニティができつつあったのに、ソーシャルディスタンスが叫ばれ、子どもたちは黙って給食を食べるという環境が続き、学校行事の実施方法も変更せざるを得ない日々でした。運動会は校庭で行う学年と教室で行う学年と入れ替えで実施することになりました。そんな中、学校運営協議会で「それぞれの立場でできることを考えよう」と声をかけたところ、町田第一小学校お父さんネットワークが、学校の先生ではできないことをやらせてくださいと申し出てくれました。

お父さんネットワークは、教室でもお家でも運動会の様子が見られるようにYouTube配信をしてくれました。これは先生だけではとてもできなかったことだと思います。発想の転換というのは今までのことにこだわらず、困ったことを伝えるということから始まるのだと思いました。その後の学校行事でもYouTube配信を行い保護者の方に楽しんでもらっています。ピンチはチャンスですね。

川合さん:
困ったことは小さいことから大きいことまで日々あります。スタッフ同士のずれはそれぞれが大事にしたいことが出てくるチャンスでもあるので、正しさを言い合うのではなく、「自分はこう思う」ということを言い合える場を作っています。コロナ禍も、何度も話し合いを行いました。命は大事、でも遊びも子どもたちにとってはとても大事。「どうしてマスクをするの?」ということもみんなで改めて考えて、「マスクをしてください!」ではなく、「人と距離を取れないときにはマスクをしましょう」と文言の一つひとつを大切にしてきました。

話し合いを重ねることで、スタッフも徐々にいろいろなことを話してくれるようになりました。また、大人の雰囲気が変わると子どもにも影響するんだということがわかりました。当日お当番の3人単位で話すということと、作業しながら話すというのが話しやすいポイントだと思います。全体メンバーは30人いるのでそこで発言しない人も、日々の作業中の中で、いろいろな会話をするようにしています。

Q4.コーディネーターの成果を具体的に手ごたえを感じたエピソードとあわせて教えてください。また、成果を評価するとしたら、どのような指標が適していると考えますか?

宮島さん:
教員生活最後の10年間は校長職を担ってきましたが、そのときずっとやってきたのは「学校へ泊まろう」という企画です。防災が目的なのはもちろんですが、みんなで星空を見たり、映画を観たり、楽しいこともやりました。活動を続けることができたのは「おやじの会」のおかげです。お父さんたちが子どもたちのために何かやろうという盛り上がりを作ることができたと思います。

地域の会議で避難訓練の参加者が高齢化し、現役の保護者世代が集まってこないという声を聞き、だったら学校で親と子どもが一緒にやったらどうかなと思ったのがきっかけです。本当にやってよかったと思っています。一緒になって楽しいことをやったときに人はつながるのだと思います。「学校に泊まろう」を経験した子どもたいが中学生になって遊びに来てくれたり、そこでのお手伝いをきっかけにおやじの会に入会したお父さんもいました。

評価は、参加した人たちがそれをやっていて楽しかったか、自分なりに伸びていると感じられたか、自分が役に立っていると感じられたか、お互い支え合うことができていたか、というのは自分の中での指標にしています。伸びているというのは、自分ってこんなことできるんだ!という発見があるということ。そんなシーンを見かけたらすかさず「さっきのはよかったですよ!」と声をかけます。自分が役に立てると感じた人は必ずまた戻ってきてくれます。

川合さん:
普段から気になる子がいたら、見守るようにしています。ある子が最初はべったりと特定の大人に甘えて、いたずらばかりしていたのですが、みそ汁の日に 「今日、味付けをしてくれる?」と頼んだのです。そして、みんなから「おいしかった」や「ありがとう」と言われて、とても嬉しかったのだと思います。毎週さつまいもを持ってやってきて、火を起こしてその場でゆでてみんなにふるまってくれるようになりました。美味しかった時のレシピも記録したりして。そして、いつからか他の子どもとも遊ぶようになり、ここにくれば安心できると思ってくれたときには手ごたえを感じます。指標は「安心感、主体性、関係性が広がったか」でしょうか。

また、気になるご家庭がある場合は、なるべくお母さんとつながっておきたいと思っているのですが、あるとき心を開かないで有名だった方に、 ちょっとしたきっかけで連絡を交換することができ、その後、子どもに許可を取ったうえで、その日のお子さんの様子や遊びなどを母親に連絡をするなどして、時間をかけて関係性を作っていました。するとあるとき、 「助けて!」という電話が入り、必要なサポートができたということがありました。助けてほしいときにつながろうとするのではなく、少しずつ関係性を作っていくことが大切だと思っています

 

Q5.コーディネーターとして活動するうえで、最も大切にしている価値観や判断軸は何ですか?

宮島さん:
子どもたちが中心になること。それから、子どもたちに本当に出会わせたい人や体験なのかということを大事にしています。一流とよく言いますが、本物というのは子どもたちは忘れないんです。そこから疑問がわいたり、やってみたいが出てきます。

私も子どもの頃父親に上野美術館でミロのヴィーナスを見に連れて行ってもらいました。すごい人で肩車をしてもらってヴィーナスのおしりを見るのがやっとでした。でもそれを今でも覚えています。デュッセルドルフの日本人学校で勤務していたとき、両親を招き、本物を見せて親孝行ができました。

川合さん:
声にならない声に耳を澄ますということでしょうか。声のトーンやまとっている空気を大事にしたいと思っています。すぐに関係性を作ろうと思うのではなく、いつでもそこにいる人でありたい。ジャッジしない、正しさを押し付けない大人でありたいと思います。

Q6.地域資源を開拓する際に、どのようにアプローチをしていますか?

宮島さん:
情報を得たら、実際にお話をしてみるよう心がけています。団体や地域の中のキーマンを探して、未来のビジョンに向けて一緒にできることがないか対話できるまでお付き合いを続けます。急がないけど、あなたのスキルを子どもにぜひ見せたいと伝えます。やっていただけたときには、子どもたちの声を何かしらの形で伝えるということを必ずしています。キーマンを動かせる人もいたら、そういうときはつなげてもらえるようにお願いします。

川合さん:
一人ひとりときちんと向き合って感謝をするようにしています。子どもは冒険遊び場だけでは育たないので、一歩外に出たときにも安心して育っていける社会にしていきたいと思っているので、地域の皆さんと尊重し合う関係性を大切にしています。

Q7.つながることが難しい方とどうつながりをつくっていますか?

川合さん:
無理してつながらなくても良いと思っています。 相手を支援の対象として見るのではなく、どういう方なのかな~と関心を持つようにしています。クレームを受けることもありますが、そういった方は何かしらの不安を持っているはずなので、どういうことに心配があるのかということを聞いて、理解しようとしています。敵ではないので。そのうえで、自分たちの考えや想いを伝えます

正しさを押し付けるのではなく、誠実に向き合うようにしています。もしも意見が合わずすぐに繋がることができなくてもそれはそれで良いと考えています。

宮島さん:
町田第五小学校で校長をやっているときに、子どもたちがNPO法人桜実会の高齢者と交流する企画がありました。子どもたちは高齢者の皆さんがどんな思いで過ごしているかということを知らないのでは?と思い、認知症サポーター養成講座で子どもたちと一緒に学び、何ができるか考えたときに、子どもたちから「似顔絵を描いて喜んでもらいたい」という意見が出ました。図工の時間で似顔絵を練習して本番に臨んだところ、本当に喜んでくださいました。つながるのが難しいと思っているのは誰なのか、相手は何で困っているのかということを考えなくてはいけないと思います。専門家の力を借りるということも必要ですね。

また、すべての子どもとつながるのは難しいので、地域で一緒に支えてくれる人と連携を取ります。学校には登校できなくても子どもセンターに行っている子がいれば館長さんから連絡をもらうなどの連携をしました。自分たちとはつながらなくても、その子が他でつながれるチャンスを沢山作るのが大切だと思います。

Q8.コーディネートの活動において、参考になった書籍や映画、印象に残っている研修などがあれば教えてください。

宮島さん:
くすのきしげのり作『おごだでませんように』です。道徳の授業でこの絵本の読み聞かせをずっとしています。こんな風に誰からも認められない子どももいるんです。子どもを支えることができる温かい地域になったらいいなと思いました。

川合さん:
西川正さん著『あそびの生まれる場所』です。共につくる、巻き込まれちゃう空気感。いつもヒントにしています。


<参加者から当日寄せられた質問>
Q.お二人はなぜそんなに子どもに入れ込んで活動されているのでしょうか?

宮島さん:
私はやはり子どもが好きです。どんどん伸びていくパワーや生命力に触れると嬉しくなります。子どもが喜ぶことをいつも探している自分がいます。一人ひとり幸せになってほしいと思うし、子どもの幸せを一緒になって探せる社会であってほしいと思います。小さな声ですが、いつも叫んでいます。

川合さん:
私の息子は雑木林のようなうっそうとしたところが好きだったのですが、近所の大人にとってはあそこは危ないから行っちゃだめな場所。だからあの子と遊んじゃいけないという風に言われてしまった時期がありました。そこから、子どもの遊び場は大人が立ち上げないといけない時代なんだと思いました。それが、今の三ツ目山冒険遊び場のある場所なんです。

そして、わたし自身は保育士で、母としての立場で活動を始めましたが、冒険遊び場で子どもの世界に入れてもらって、子どもって日々こんなに一生懸命生きているんだということを感じました。それを伝える代弁者でもありたいと思っています。

研究会の最後には、ゲストのお二人に「あなたが「あこがれる/めざすコーディネーター像は?」とお聞きしました。お二人の答えは以下の通りです。

宮島さん:本物を探す大人 感動を大切にする大人
つなげるためには自らがこういう気持ちでいなくてはいけないなと思っています。

川合さん:共につくる
わくわく、笑って、楽しく、一緒にできたねという感覚を持る大人でありたいなと思います。


第3回まちだのコーディネーター研究会は、9月11日(木)に開催します。
詳細・お申込みはこちらからご確認ください。
https://machida-support.or.jp/event/coordinate03/


▼第1回まちだのコーディネーター研究会の開催レポートはこちら
https://machida-support.or.jp/report/performance/coordinator_vol1/

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